第15回定例会 DOORとの関わりから〜2つのアートフィールド

NEXT DOOR 世話人

2021年8月28日(土)

NEXT DOOR第15回定例会は、DOORにご縁の深い2人に登壇いただき、2つのアートフィールドが展開されました。

一人目は、DOOR第一期生でAiS(アーティスト・イン・そんぽの家)レジデンスアーティストでもある上海出身の楼(Lou/ロウ)さん。現在、弘前れんが倉庫美術館で学芸員として活躍する楼さんは、東北で暮らす中で感じた土地の魅力や、美術館だからこそ出来る地域貢献について、青森ならではの「りんご」や「ねぷた」を取り上げて語りました。

「りんご宇宙―Apple Cycle / Cosmic Seed」展では、木で作られたりんごの彫刻(雨宮庸介《チャールズのかしの木座にりんごの実のなる》2021年)が展示されました。一方から見ると本物そっくりで、もう一方から見ると溶け出していたりと異形で不揃いな作品群に、若い人や農業と関わりのない人は「本物っぽい!」「面白い!」とポジティブに興味を見せたのに対し、りんご農家さんからは「何故あんなことに……」と悲嘆の声が上がるなど、反応が様々に見られ、同じ地域に暮らす人々の中に染みこんでいる共通の感覚と、同じものを見ても人それぞれ全く異なる反応と受け取り方をするという、多様性が混在する面白さを指摘しました。

美術館には、”普通に”それぞれの日常を暮らしているだけでは出会い何かを共有することはないであろう表現者(作り手)と地域の人々、観光客等を集わせてつなぐ、地域のクリエイティブハブになり得る可能性があることを示唆しました。

二人目は、DOORスタッフでありアーティストとしても活躍する齊藤さん。「カワイイ+ハゲシイ絵」をテーマとする創作活動に活かされている経験がシェアされました。
山形出身の齊藤さんは、毎日何かを描いている落書き少年。学生時代は人見知りで、どうやったら人と話せるのか、自分に興味を持ってもらえるのかを模索する日々。空回りしたり人間関係が思うようにいかず挫折も味わいましたが、「何かを表現したい!」という心の灯は強く燃え続けていました。

その心の灯を原動力に、好きな音楽と得意のイラストを用いて国内外問わず心惹かれるミュージシャンに自らコンタクトを取り活動を展開する中で、変化と未知なるものへの進化を求め上京。ファッションや表現方法など多様な価値観を持つ人の多さに圧倒されました。そこで「作品=自分」とも言えるアイドルや自撮りの表現に衝撃を受けます。それは現在の作品(作風)につながる大きな出会いでした。

多忙を極める日々に自分を見失いがちになった頃、とびラーを知り、参加。みんなで創る楽しさや一瞬で場を作るアイスブレイクの絶妙さに感銘を受け、それもまた新しい作品を生むためのエレメントとなりました。そのご縁がDOORスタッフ就任へも続いています。

挫折や行き詰まりを経験しながらも「捨てる神(コミュニティ)あれば拾う神(コミュニティ)がある。行き詰まったら、コミュニティを変えれば良い」と話す齊藤さんからは、自分の情熱に正直でいることが何より大切だとのメッセージを受け取りました。(世話人川上)