建築計画学、建築史、近代史。幕末から明治・大正期にかけての盲唖学校(盲人・ろう唖者が通学する学校)について、建築空間・社会・文化から考察している。近著に『点字以前』(2019)『伊沢修二と台湾』(2018)など。https://tmtkknst.com/
横浜国立大学 × DOOR to DOOR
コンタクト:惑星のなかのこの身体 ―現代芸術論―
第6回:12月17日(火)13:00-14:30
講師:
木下 知威(日本社会事業大学)/百瀬 文(アーティスト、映像作家)
第6回は再び木下知威さんと、映像作家の百瀬文さんにご登壇頂いた。
冒頭では、先天性のろう者である木下さんと聴者である百瀬さんの声をめぐる対談を記録・編集した作品「聞こえない木下さんに聞いたいくつかのこと」を鑑賞した。
今回の講座は字幕と音声のズレに関するテーマにした本作品を振り返る形で行われた。
百瀬さんは、作中で成立している対談は聴者である鑑賞者にとっては字幕を読むことでしか意味を理解できない点ではむしろ不自由であり、本作品においてどちらが弱者か明言できない瞬間がある、と語った。
出演した木下さん本人は、聴者である鑑賞者が気づくズレに気づけない。
聴者の感想を聞くことでそのズレを知ることはできるが、作品の本質には辿り着けない。
木下さん自身の撮影経験と鑑賞者の経験にズレがあるため、リアリティとファクトがあべこべに感じると語った。
作品の最後に百瀬さんの「声や音声に関わらず私たちは同じ場所にいるかもしれない」という投げかけに対し、「振動は伝わるがそんなものは何もない」と木下さんが返答する場面がある。
対談の最後にコミュニケーションの欲望はそんなに生ぬるいものではなかったと判明したこの場面を重要と感じ、着地点を変更したと締めくくられた。
冒頭では、先天性のろう者である木下さんと聴者である百瀬さんの声をめぐる対談を記録・編集した作品「聞こえない木下さんに聞いたいくつかのこと」を鑑賞した。
今回の講座は字幕と音声のズレに関するテーマにした本作品を振り返る形で行われた。
百瀬さんは、作中で成立している対談は聴者である鑑賞者にとっては字幕を読むことでしか意味を理解できない点ではむしろ不自由であり、本作品においてどちらが弱者か明言できない瞬間がある、と語った。
出演した木下さん本人は、聴者である鑑賞者が気づくズレに気づけない。
聴者の感想を聞くことでそのズレを知ることはできるが、作品の本質には辿り着けない。
木下さん自身の撮影経験と鑑賞者の経験にズレがあるため、リアリティとファクトがあべこべに感じると語った。
作品の最後に百瀬さんの「声や音声に関わらず私たちは同じ場所にいるかもしれない」という投げかけに対し、「振動は伝わるがそんなものは何もない」と木下さんが返答する場面がある。
対談の最後にコミュニケーションの欲望はそんなに生ぬるいものではなかったと判明したこの場面を重要と感じ、着地点を変更したと締めくくられた。
講師プロフィール
日本社会事業大学
木下 知威
アーティスト、映像作家
百瀬 文
1988年東京生まれ。撮影者と被写体の関係性のゆらぎを映像自体によって問い直す作品を制作している。近年の主な企画展に「六本木クロッシング2016展: 僕の身体、あなたの声」(森美術館、2016年)など。