• 選択科目
  • 人間形成学総論
2021
8/7

人間形成学総論②

講師: 渡邊祐子(東京藝術大学 非常勤講師)
2回目の講義では、人生の捉え方について講義が行われました。人は誰でも誕生から死に至るまで自らの歴史を創造し記録していく存在であり、その人独自の人生のストーリーは他人には描けないものだと渡邊先生は言います。人が生まれてから死ぬまでの一生をテーマとし、人の一生を通じての幸せづくりに教育の観点からアプローチしようとするものが生涯学習です。

生涯教育においては、老いや死そのものを含む人生をどう考えるかというところも問題になってきます。人のライフステージにおける発達課題だけでなく、生理的、精神的、社会的な変化をめぐって現れてくる人生の課題において教育がどんな役割を果たすのか、役割を果たすことが人間の成熟とどう結びついていくのか。これについて考えていくことは教育学の一つの命題だと渡邊先生は話します。

長い人生の途上に起こるさまざまな出来事において、自分自身が主役であったときのみ、人は活き活きと生きることが可能になる。人間は人とのつながり、時間を超えたつながり、自然とのつながりの中に生きているからこそ、自分自身が主役になって生きなければいけない、と渡邊先生は強調されました。

講義の後半は、自律的学習者をめざして、というテーマで講義が行われました。生涯学習は乳幼児から高齢者まで、すべての人が取り組むものです。しかし狭義では学校教育終了後に社会で自律的な生活を営む成人期に重点を置くことが多いです。学びの諸相を理解したうえで、大人の学びについて考えました。

成人の学習は、他から与えられるものではなく、自らが自らの人生の局面を乗り越える行動であり、人生や社会の変化にともなって起こる、人生の危機的でシリアスな問題に取り組むことだと渡邊先生は話します。 

自分で目的や目標を持ち、それを外部から受けたことと合わせて再度組み合わせ、自分自身の学びのあり方を自身の支配下において自己を見つめながら進めていくことが自律的学習の中には見られる、と渡邊先生はまとめました。

講師プロフィール

東京藝術大学 非常勤講師

渡邊祐子

東北大学大学院教育学研究科博士課程修了後、都内の大学で教育学の教鞭をとる。専門は生涯学習、美術館教育。
21年までは、東京都美術館委託専門家としてMuseum Start あいうえのプログラム・オフィサーを務める。