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2021
7/31

人間形成学総論①

講師: 渡邊祐子(東京藝術大学 非常勤講師)
4日間の講義はオンラインで行われました。
人間形成学総論では、教育を通じて獲得されていく学びや教育の原理、教育学の基礎を学びます。

初回の講義前半では、渡邉先生より自己紹介が行われました。今の自分を作り上げているものや自分に影響があったものを振り返り、その後受講生同士でも自己紹介の共有を行いました。
口述による聞き取りを文字化し、編集することで個人の生活(人生)を記録する手法はライフヒストリーと呼ばれ、社会教育の研究手法として用いられています。個人の主観的な考えを明らかに、人間の行動を理解することを目的にライフヒストリーは利用されてきました。

講義の後半では、現代社会における学習課題をテーマに、偶発的学習について講義が行われました。偶発的学習とは、日常生活において、偶然起きた出来事によって、何かを学んだり、考えたり、人生に有益な何かを得たりすることです。
効率的・組織的で人をよりよい方向へ導こうとする意図をもって行われる教育行為に対して、偶発的学習は、非効率的で、どのように人が変化していくのか意図されていないものです。人生の中で、人は様々なところで学んでいます。学校に通ったり先生から教わるのは人生の中の限られた期間で、その他の時間は偶然何かを学ぶことがほとんどだろう、と渡邊先生は話します。職場やアルバイト先、家庭やサークル、コミュニティなど、様々な場所で偶発的学習は行われています。

講義の終盤では、生きがいについて講義が行われました。生きがいとは、人間的な生の最中でのこと。今、ここで起こっていることが問題になります。自分の顔そのものを自分の目で直接見ることができないように、自分自身のことはよく知っているようで自分が一番分からなかったりします。このことは生きがいについても言えて、生きがいを問うことは、人間的な生そのものを論じること。まさに生きがいとは今起こっていることである、と言えます。

生きがいとは、単に論じることだけではなく、何かや誰かとかかわることを自分なりに主体的に生きて、自分自身の生の深い意味を実感することです。人生や生活の難しさに直面したときに、豊かで充実した人生の新しい点を切り開く。この中で生きることの関心、すなわちなにかと関わる心の中で生きがいは感じられやすい。新しい自分の可能性を見つけたいと思ったときに生きがいは顕著に表れてくるのではないか、と渡邊先生は言います。

学びとは、知識を得るだけでなく、真に自分らしく生きる工夫と努力の場が具体的にあり、自分自身の行動や意識が変化していくことで私たちの生を根底から支え生かすものであると考えることができるのでないか。その中で生きがいを見つけることもある、と渡邊先生はまとめました。

講師プロフィール

東京藝術大学 非常勤講師

渡邊祐子

東北大学大学院教育学研究科博士課程修了後、都内の大学で教育学の教鞭をとる。専門は生涯学習、美術館教育。
21年までは、東京都美術館委託専門家としてMuseum Start あいうえのプログラム・オフィサーを務める。