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2023
7/4

ARTs×SDGsプラクティス/講義②「新しい環境観をめぐる現代アート ─ 『サステナビリティ』の自己矛盾を超えて」

講師: 黒沢 聖覇(キュレーター/アーティスト)
◼講義概要

 長年、多くの美術関係者は環境問題に取り組む責任について自覚的であり、持続可能な実践を推進する必要があると考えてきました。昨年には、ICOM(国際博物館会議)が 博物館の新定義をおよそ半世紀ぶりに大幅改正し、特に「包摂的 (inclusive)」、「多様性(diversity)」、「持続可能性(sustainability)」といったキーワードを追加しました。一方この改正と時を同じくして、環境保護活動団体によって、ゴッホやモネといった数々の名作を攻撃することで、 化石燃料を扱うプロジェクトの中止を求める抗議活動が多発しています。

 この講義では、サステナビリティや新しい環境観を問う芸術作品や美術館の取り組み、講師自身のこれまでの実践など様々な現代美術の事例を紹介しつつ、芸術を通してSDGsやサステナビリティと向き合うことの困難や矛盾も考えてみようと思います。「アートか命か 、どちらのほうに価値があるのか」という究極的な問いが具体的な現実のアクションをともなって議論される今日にあって、私たちは芸術という規範を通してどのような持続可能な未来を創造できるのか、皆さんと一緒に考える機会にできればと思います。

講師プロフィール

キュレーター/アーティスト

黒沢 聖覇

キュラトリアル実践を通して、自然環境・社会・精神の領域を横断するエコロジーと現代美術の関係性を研究。東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科修了(学科首席)。2022年より金沢21世紀美術館学芸員、2023年7月より株式会社とりくむ所属。金沢21世紀美術館での主な担当展覧会に、「コレクション展1 それは知っている:形が精神になるとき」(2023年)、「アペルト18 顧剣亨 陰/残像」(2023年)、「アペルト16 AKI INOMATA Acting Shells」(2022年)、「時を超えるイヴ・クラインの想像力─不確かさと非物質的なるもの」(2022年)など。タイランド・ビエンナーレ・コラート2021(ナコンラチャシマ県各地)コ・キュレーター、「ZERO IS INFINITY 『ゼロ』と草間彌生」(2020年、草間彌生美術館、東京)キュレーター、第7回モスクワビエンナーレ「Clouds⇆Forests」(2017年、トレチャコフ美術館新館、モスクワ)アシスタントキュレーターなど、国際展の企画にも多く携わる。ジャポニスム2018「深みへ─日本の美意識を求めて─」(ロスチャイルド館、パリ)など、国内外の展覧会にアーティストとしても作品を出品。https://www.seihakurosawa.com/