関根 怜香さん(藝大生 )
東京藝術大学 芸術学科 美術学部
それぞれの背景や考えが重なり合い、味わい深い授業

①藝大での活動や作品、研究テーマなど教えてください。

 藝大では美術学部の芸術学科に所属しています。小さいときから歴史に興味があり、美術の歴史を深く学ぶことができる芸術学科に入学しました。

 芸術学科では主に美学と美術史を学びます。1年生・2年生では美学史、日本美術史、東洋美術史、西洋美術史の概論を幅広く教わりながら、週に3日は基礎造形実技と呼ばれる実技の時間があります。デッサン・油絵・写真・キュレーション・彫刻・日本画などを専門の先生にご指導いただきます。3年生から4年生にかけて、テーマを絞った美学や美術史の授業を履修しながら自分の興味をより深く追求していき、卒業論文に取り組みます。私は和鏡を研究したいと考えています。具体的な内容は今のところ検討中ですが、これから進めていきたいと思います。

 また、サークルは茶道部に所属しています。茶道部には退任された先生方の作品や卒業生の方の作品、先輩方から寄付していただいた作品などが数多く伝わり、学年も専門もさまざまな方と共に、日々稽古に励んでいます。

 

②授業や演習の中で印象に残っている場面はありますか?

 受講のきっかけは、入学時に配布された授業案内のパンフレットです。この大学ならではの授業に参加してみたいと思っていました。私の所属する芸術学科では映像作品をつくる授業が開講されていなかったので、DOORで開講されている「ドキュメンタリー映像演習」がとても魅力的に感じ、履修しました。

 受講年度のテーマは「うらやす、あきない」で、授業の内容としては、浦安市内で商業を営むところへ取材を行い、チームでドキュメンタリー映像作品を制作するというものでした。私たちのチームは街の電器屋さんを取材させていただきました。快く撮影を受け入れてくださり、お客さんの家に赴いて商品を修理したり浦安市内のイベントへ参加したりする様子をカメラに収めました。取材を通じて、地域のつながりをとても大切にされていることを切に感じました。

 作品制作から1年ほど経った今年の夏、『第11回うらやすドキュメンタリー映画祭』にて再び作品を上映していただく機会をいただきました。取材先の方と再会し、私たちの制作した映像作品をお客さんがご覧になったというお話を伺いました。私たちの作品も、「つながり」の一部になれたのでしょうか。

 

『第11回うらやすドキュメンタリー映画祭』ポスター/『第11回うらやすドキュメンタリー映画祭』登壇

 

③社会人と一緒に学んでみていかがでしたか?
 DOORの授業の大きな特徴に、社会人の方と藝大生が一緒に取り組むということがあります。1年生で履修した「ドキュメンタリー映像演習」はチームで1つの作品を作る形式でした。私以外は社会人の方だったのですが、取材や話し合いなどチームで活動することが多く、他の方が作品についてどのように考えていらっしゃるのかを間近で知ることができました。
 皆さんお仕事がありながらも、仕事終わりに取材を行ったり、取材のために前日泊を行ったりするなど、授業に対する覚悟の違いを見せつけられたなと思い、頑張ろうと思いました。チーム内での度重なる話し合いや講師の先生からのアドバイスもあり、満足のいく作品に仕上げることができました。

 また、今年度履修している「人間形成学総論」ではグループワークの時間が多く設定されていました。時間は毎授業30分ほどと「ドキュメンタリー映像演習」よりは短いものの、さまざまな受講生の方と意見を交換して交流することができました。グループワークの多くは講師の方のご経験と授業内容に沿ったものなのですが、社会人の方は私の持つ視座とは異なるので、刺激のあるものでした。
 私はDOORへのきっかけがアートという立場だと思います。しかし、社会人の方はケアの分野に携わっていたりケアやアートに対して興味があったりする方が多く参加されていると感じます。それぞれの背景や考えが重なり合い、授業がより味のあるものになっていると思います。

 

人間形成学総論の授業内で行った「マイ・ミュージアム・ボックス」ワークショップの成果。 タイトルは「旅先で出会うもの、そして出会うもの」

 

④DOORの授業を受けて、ご自身の活動への影響などがあれば教えてください。

 授業の受講中は、正直なところ自分に与えられた課題で精一杯でした。講師の方と発表に向けて直前まで内容を練り、発表が終わるまでは緊張でいっぱいでした。昨年度より「ケア×フィールドワーク実践演習」にて何度かTA(ティーチングアシスタント)をさせていただいております。先日、受講生の方と共にフィールドワークに参加しました。事前調査を踏まえた2時間ほどのフィールドワークのなかでどのように課題に向き合い、解決の手立てを考えるのかというプロセスをやや客観的にみることができました。

 

ケア×フィールドワーク実践演習ではTAとして、学外のフィールドワークに同行した

 

 また、回を追うごとに受講生の方の課題に対する考えや手立てが洗練されていく様子を目の当たりにしました。TAとして授業に参加させていただいているからこそ、受講生では知りえないことに気づくことができました。多角的・重層的に物事を見つめることができ、とても大きな学びを得ることができました。

 藝大では教職課程と学芸員課程も履修しています。授業を受けるなかで、いずれも美術に携わる者としてとある事柄に対してどのように考え、働きかけることができるのかと問われているような気がします。このことはDOORの軸である「ケア×アート」に通じるところがあると思います。