
① DOORを受講しようと思った理由を教えてください
私はこれまで、目の前の生活を支えるための社会福祉だけでなく、「たのしい福祉」を考えることができないだろうかと模索してきました。そんなときにDOORの存在を知り、受講を決意しました。
アートには、自分と他者との間(あいだ)をつなぐ社会的機能があることに気づいたことが大きなきっかけです。社会福祉の研究や教育の現場で、一人ひとりが持つストーリーをアートを通して掘り起こし、そこからコミュニケーションの場を創出できれば、人々は社会課題をより「自分ごと」として捉えることができるのではないかと考えるようになりました。
私は、多様な人々が共に楽しく生きるための「アートを介した社会福祉」を探求したいと思っています。そのためには、科学的根拠に基づく福祉実践だけではなく、アートの持つ直感的・感覚的な力を取り入れて、社会のダイバーシティの包摂を実現する新しい形の福祉を構想していきたいと考えています。DOORは、まさにそのための学びと実践の場であると感じています。

DOOR特講「ストーリーテリング」授業風景
②印象に残っている講義や実習について教えてください
DOORで学ぶ講義には「ダイバーシティ」「共生」「ケアの本質」「連帯」「観察」「文化的処方」といったキーワードがあります。これらがすべてつながったと実感できたのは、「明後日朝顔」の実践を通してでした。
明後日朝顔は、日比野学長が2003年から続けているプロジェクトで、代々受講者が育てた朝顔の種が私たち9期生にも届きました。植物を枯らしてしまうことの多い私ですが、ここで途絶えさせるわけにはいかないと調べながら種を植え、発芽にワクワクしました。猛暑で一度は瀕死になりながらも再生していく姿に、「生きている」実感を分けてもらいました。
朝顔には多くの生き物が訪れました。オンブバッタのメスが住み、スズメガの幼虫は若葉を食べ荒らし、今はコナカイガラムシが群れています。虫が苦手な私ですが、必死に駆除法を調べるうち、ここがコンクリートに囲まれた住宅街の「小さなオアシス」と気づきました。望まぬ来客でも、世界はこうして回っている。私にできるのは水をやり、環境を整え、見守ることだと考えるようになりました。
ある日、ご近所さんが「私も咲くのを待っているのよ」と声をかけてくれ、生活の場にも思わぬつながりがあると知りました。さらに、DOOR特講では「いつも見ていますよ」「勇気づけられました」と声をかけてくれる受講生もいて、学びが生活を通じて共有されていると実感しました。
DOORでの学びが日々の暮らしにまで浸透していく。そのことに気づいたことが、最も印象的な学びだったと思います。

朝顔の開花の様子
③仕事や生活とDOORプロジェクトの両立について聞かせてください
私は、仕事と学業の両立は比較的うまくできていると感じています。その理由の一つは、大学に所属しているため、DOORのスケジュールと自分の生活リズムが一致しやすいことです。普段は教員として学生に授業をしますが、DOORでは立場が逆転し、学生として学ぶことが心地よいリズムになっています。さらにオンライン受講が可能である点も大きく、もし対面のみなら参加は難しかったでしょう。
一方で、生活との両立は簡単ではありません。今年度前期は月曜5限に自分の授業があり、その後すぐDOORの講義に参加し、終了後に約1時間半かけて帰宅していました。内容が深く考えさせられるため、帰宅後も頭が冴え、睡眠リズムが崩れることもありました。幸い後期は自分の授業が3限までなので、DOORの講義前に帰宅して落ち着いて臨めそうです。
DOORは知識と刺激に満ちており、休日にはアーカイブ配信を視聴してほとんど全ての講義を受講しました。対面授業のDOOR特講にも積極的に参加し、家族の理解と協力も大きな支えです。特講の際には家族と犬が一緒に東京に同行し、私が学んでいる間に観光を楽しんでいました。このように家族も関わってくれるのは心強くありがたいことです。
振り返れば、今年はまさに「DOOR漬け」の一年でした。これほど贅沢に学びの時間を持てる機会は他になく、DOORを通じて新しい視野を得られたことをとても幸運に思います。

