CHAN SIN YIさん(藝大生)
東京藝大先端芸術表現専攻 大学院生/2024年度受講/千葉県在住
学生も社会人もお互いに成長し合える貴重な機会


①DOORを受講しようと思った理由

DOORプロジェクトを知ったきっかけは、入学後に配布された履修登録の冊子に掲載されたガイダンスです。「多様な人々が共生できる社会」を目指すこのプロジェクトに強く惹かれ、カリキュラムについてさらに調べるうちに、他者と共に作品を作り上げるアートプロジェクトの魅力に引き込まれました。新たな場で異なる背景を持つ人々と交流し、共にプロジェクトに取り組む中で、社会における芸術の役割についての理解がさらに深まることを期待しています。このような理由から、DOORへの参加を決意しました。
 
また、私は普段ケアに関わる機会が少ないため、ケアとアートのつながりを探求したいという関心も持っています。ケアの場でどのように芸術的な創作が実現されるのか、社会とのつながりを多角的に深めながら、アートが社会課題にどのように寄与できるのか、その可能性を自分なりに探っていきたいと考えています。この経験が、今後の創作活動に新たなインスピレーションをもたらしてくれることを期待しています。

 

②印象に残っている講義や実習 

私が特に印象に残っている講義は「プログラム実践演習」です。この授業は、日比野先生が2003年に始めた「明後日朝顔プロジェクト」を出発点として、新潟県十日町市の莇平という裏山に囲まれた20軒、約50人ほどの小さな集落を訪れ、そこで集落の方々との交流や発見を通じて記事のネタを見つけ、それを基に新聞を制作します。
 
私たちのチームが莇平を訪れた際には、ちょうど夏の恒例行事である莇平集落の盆踊りが行われていました。祭りの流れに参加しながら、地元の方々やアーティストの皆さんにインタビューを行い、その場で多くの方々と出会い、交流を深めることができました。東京ではなかなか味わえない、人と人、そして人と地域のつながりが生み出す独特の雰囲気を、肌で感じることができました。
 
アーティストの方々との会話を通じて、集落の皆さんのおかげで莇平で毎年アートプロジェクトが続けられる意義を実感しました。日比野先生の「明後日朝顔プロジェクト」が20年以上も続いているのは、集落とのつながりが少しずつ築かれてきたからこそだと感じています。真夏の莇平は非常に暑く、交通も不便でしたが、集落の皆さんが初めて訪れた私たちを温かく迎えてくださり、貴重な学びを得ることができました。

 

③仕事/生活/学業とDOORプロジェクトの両立について

社会人と共にアートプロジェクトを進める中で、異なる価値観を持つ人々とのコミュニケーションの重要性を実感しました。社会人とチームを組み、最初の段階からみんなで仲良く進めていきます。授業以外の時間でも情報を共有し合い、互いに集まる時間を工夫します。
 
インタビューを行う前には作戦会議を行い、意見を交わしながら異なる意見を尊重し合います。各メンバーがそれぞれの得意分野を担当し、お互いの強みを活かすことで、チーム全員が力を合わせてプロジェクトをスムーズに進行させることができました。作業が進むにつれて、何度も細かな調整を行い、作品が形になるまで少しずつ前進していく過程を皆で共有しました。また、実践中には一緒に作業しながら、さまざまな新鮮な体験も味わうことができました。
 
このような経験を通じて、学生も社会人もお互いに成長し合える貴重な機会であると感じました。DOORの授業を通じて、社会人の方々と出会えたことを嬉しく思います。これからもこのような機会を大切にし、さまざまな人との交流を通じて自己を磨いていきたいと考えています。