藤本雅衣子さん(6期生)
(NPO団体職員/2022年度受講/東京都在住)
たくさんの方々との対話を通じて、今までは知らなかった景色が見えてくる1年になるはずです

①DOORプロジェクトへ参加した(知った)きっかけ
 私は教育系のNPO団体職員として働いており、広くは「社会課題を解決すること」を仕事にしています。しかしその一方で「その社会課題の当事者ではない自分が、この課題に関わることははたしてよいのだろうか」という気持ちを抱えていました。
「問題の当事者性」について探究したい気持ちがあり、多様な立場の人と対話し、対話を通じて自分の問いの答えを探したいと思っていました。そこでどこか学べる場所がないかと探していたところ、東京藝術大学の卒業生である友人に紹介してもらったのがDOORを知ったきっかけです。
1年という受講期間と、社会人でも受講しやすい夜の時間帯で開講されていることもあり、学び直しの第一歩にちょうどよいなと感じ「受講するかは受かったら決めよう!」と、願書を提出しました。

②印象に残っている講義や実習
 どの講座も学びがとても多いのですが、最も気付きを与えてくれたと感じるのは「ケア実践場面分析演習」という授業です。この授業は、実際にケアの現場にお邪魔をして、その現場の方々との交流を通じて自分たちが学び感じ取ったことを作品を通じてアウトプットしていく実践型の授業です。22年度は「現場を伝えるを作る」というテーマで活動をしました。
私は実習先として児童養護施設を選択し、4人のチームで約半年間活動をしました。子どもたちの実際の暮らしや、それに伴走する職員の皆さんの声を直接聞くことで、私自身そしてチームメンバーにもたくさんの問いや迷いが生まれ、今まで持っていた社会的養護の子どもたちへの先入観やイメージが剥がれ落ちていくのを感じました。
 私たちが対話し、問いを持ち、その問いを作品や対話を通して別のだれかとまた共有し、互いに気づき、そしてまた一緒に迷う、この一連の出来事がアートのようなもので、その目の前の問題や課題を、たとえ当事者ではなくても自分事として捉える第一歩になると感じるようになりました。

③仕事/生活/学業とDOORプロジェクトの両立について
 受講が始まるまでは「本当に最後まで続くかな…」と不安もありました。しかし、実際は週1回90分程度の講義で時間的な負担も大きくなく、毎週が楽しみながら無理なく続けることができました。仕事が主に在宅勤務なので、講座の5分前に仕事を終わらせてZoomに接続するというリズムができあがりました。受講生には、平日仕事をされている方も多くおり、講座の間だけ仕事を抜ける方など、各々が自分なりのリズムが見つかっているようでした。
さらに土日の講義が少ないことも、続けやすさの要素でした。社会人向けの講座は、土日の休みを使った短期集中のものが多く、一回の時間的な拘束が大きく感じられたり、予定と被り出席できなくなるケースもありました。しかし、DOORは短い講座をコンスタントに受講するので、ほぼ全ての講義に出席することができました。感覚としては「学び直しをしたいけど、大学院に入学するのはちょっと両立ができるか不安」という方には、ちょうどよい量の学習時間ではないでしょうか。
 最後に、私自身は受講以前は「アートってよくわからないけど大丈夫かな…」と感じていました。しかし、このDOORでは必ずしも今までアートに触れてきたかどうかは関係ありません。DOORを通じて自分自身の新たな関心領域が見えてくるでしょう。私もそのひとりです。
たくさんの方々との対話を通じて、今までは知らなかった景色が見えてくる1年になるはずです。
(2023年1月23日 公開講座トークセッションより)