鈴木なおみさん(6期生)
(行政職[児童福祉]/2022年度受講/東京都在住)
仲間との出会いとともに小さなトライに挑戦してみようとエネルギーチャージできた実感をもっています

①DOORプロジェクトへ参加した(知った)きっかけ
 児童福祉関連の行政職でこの3月で40年になります。0歳から18歳までの子どもと向き合う日々は、喜びも楽しさもありますが、ここ数年は悲しい事件が相次いだり、同僚が、次から次へと体調を悪くして休職や退職に追い込まれていく中、定年を迎えた自分は、次世代の人材を支えながら、どの立場でモチベーションを維持していけばいいのか迷いはじめていました。そんな時期に、たまたま身内が藝大のデザイン科とクラリネット専攻で学ぶことになり、藝祭や卒展などを通して、もがきながらも自らの表現を追求し、生き生きとした学生生活を送る彼らの姿に触れる機会が日常に入り込んだのです。そこで私自身が学びの世界への欲求度が高まり、学びの場を探したところ、藝大のHPでDOORの「藝術×福祉」という文字を発見しました。現在の福祉、社会の課題を広い視点でとらえ直し、多様な講義や人との出会いを求めてみたい一心で飛び込むことにしました。私の中で、いつのまにか人との出会いも、思考も、凝り固まってきて、悟ってしまったような気になってしまっている脳みそを「ごにょごにょ」いじくりまわしたい衝動にかられていたのだと思います。

②印象に残っている講義や実習
 講義の印象としては、1年間のプログラムがとても受講生の学びのモチベーションを高めてくださるように組み込まれていて、「もう1年残りたい!」と思ってしまう程の充実感満足感をもっています。私が印象的だったのは、前期・後期通して「福祉楽団:飯田大輔さん」の講義です。あたり前に使われる「寄り添う」「傾聴」といった福祉のキーワードを、原点にかえりながら現実を振り返り問題提起してくださる内容に、深く納得させられました。「科学的に語られてこなかった・情緒的な判断にゆだねる福祉の実態」「まずは、生活を整える(日常を整える)」等、私の中にじわじわ染み込むキーワードがあふれていました。
 選択授業は、「ドキュメンタリー映像演習」をとりました。今年は、浦安市の街を「水」というテーマで取り上げ、4・5人のグループに分かれて映像を作っていく内容でした。テーマを決めた後に、取材として浦安市に何度もグループで通うことになるので、機材の手配や時間等はやりくり調整しなければならなかったのは大変でしたが、フィールドワークを通して市民の方たちとのインタビューを重ねていく過程は、街の人々が作り上げてきた歴史・人生観・未来像を共に共有する貴重な経験を得ました。また、多様なメンバー(学生と社会人)でチームワークを築きながらの制作する体験は、DOORならではの時間だと感じました。
 全体を通して、講義も演習も、講師や受講生、受講生同士の「対話」という時間がとても印象に残っています。
 特に、毎週の講義の後の質疑応答では、一斉に挙手があがり、質問される方が、講義についての感想や質問を的確にまとめて掘り下げてくださるので、講義を少し発展させたやりとり他、まさに、多様な考えの対話を展開されていたと思います。

③仕事/生活/学業とDOORプロジェクトの両立について
 私自身は、元々健康的には元気でしたが、年齢的な事と仕事との両立を考え、フルタイム勤務ではなく週4日に仕事時間を切り替えたのを契機に申し込みました。動き出したら止まらない自分の性格と、このDOORの受講は、できるだけ中途半端に終わりたくないという気持ちをもっての申し込みだったので、シルバーの年齢としてはよかったかと思います。少し余裕をもって臨んだことで、修了後も自分の問いを整理して、DOORの仲間との出会いとともに小さなトライに挑戦してみようとエネルギーチャージできた実感をもっています。

(2023年1月23日 公開講座トークセッションより)