山根直子さん(6期生)
(医療ソーシャルワーカー/2022年度受講/山口県在住)
あの時思い切ってDOORの扉を開けた自分を褒めてあげたくなるに違いありません

① DOORプロジェクトへ参加したきっかけ
 私は自身のがんサバイバーとしての経験を何かの役に立てられないだろうかと思って社会福祉士の資格を取り、現在は医療ソーシャルワーカーとして患者さんの相談対応などを行っています。
 しかし次第に、病院内の患者さんだけでなく、地域や社会に目を向け、自分に何ができるかを考えたいと思うようになりました。何かヒントはないかと、何の予備知識もないままインターネットで検索をするうちに、DOORプロジェクトのHPが目に留まりました。「アート×福祉」そこに私が知りたいことがあるかもしれないと直感しました。なぜなら、私は闘病生活で人生に行き詰りを感じていた頃、ある一枚の絵と出会って思考を転換でき、自分の殻に閉じこもっていた人生から外の世界へと踏み出せたという経験を持っているからです。
 申込みの締切り5日前でしたが、すぐに準備を始め、無事DOORの扉を開くことができました。また、受講するにあたり、地方在住の私にとってオンラインで授業が受けられることは、大きな選択理由であったことは言うまでもありません。

 

② 印象に残っている講義や実習
 私が一番印象に残っている講義は、プログラム実践演習です。「変化するパブリックアート」として、ワールドカップの開催に合わせて行われた「アジア代表日本2022 WORLD PEOPLE CUP」というアートプロジェクトと連携し、応援する国々を題材に陶芸作品を作り展示をするというものでした。
 プログラム実践演習は、選択科目Ⅰの中で唯一オンラインだけでも受けられる講義でした。私は地方在住なので対面授業を受けることは難しいと思っていましたが、東京藝術大学取手キャンパスで行われた対面実習へ思い切って参加してみました。それまではPCの画面越しであった布下先生や受講生の皆さんと実際にお会いでき、一緒に作品を作ったり野焼きをしたりという、貴重な体験ができました。また、受講生同士でそれぞれが持つ思い、経験、情報などを共有できる機会にも恵まれ、オンラインだけでなく対面授業にも参加して本当に良かったと思います。
 さらに私たちの作品がパブリックアートとして、九州国立博物館での展示や東京藝術大学国際交流会館へ設置されるという機会にも恵まれ、作品や私たち自身がどのようにアートプロジェクトへ関わるのかを実感できたことも大きな学びとなりました。

 

③ 仕事とDOORプロジェクトの両立について
 私は先ず、とにかくこの一年は「インプットの年」にすると決意し、そのために時間とお金を費やすと覚悟を決めました。
 DOORの受講開始と同時期に、働き方改革のためなるべく残業をせず定時に帰るよう奨励されたことや、同僚へ「月曜日は早く帰る日宣言」をして協力が得られたことなどの環境に恵まれ、なんとか平日夜間の講義へ出席することができました。しかし、講義に出る時間は取れても、講師の著書を読むなどして理解を深めることまでは難しく、前期後期のレポート作成については締切り間近になって慌てて行うという有様でした。
 振り返ると、いつも何かに追われる一年であったように思いますが、言い換えれば、充実した一年であったとも言えます。大人になってから、このような濃密な学びや、人との出会いが持てたことは、至福と言っても過言ではないでしょう。何年か経ってこの一年を思い返すと、あの時思い切ってDOORの扉を開けた自分を褒めてあげたくなるに違いありません。

(2023年1月16日 公開講座トークセッションより)