山中翔さん(藝大生)
(東京藝術大学美術研究科学生/2022年度受講/茨城県在住)
アートと福祉をまたいで様々な方々の生き方、考え方を垣間見ることができました

①DOORプロジェクトへ参加した(知った)きっかけ
 私は東京藝術大学大学院美術研究科で、美術教育研究室に所属し、日本画の実技制作研究とともに美術を論じることを研究しています。DOORプロジェクトを知ったきっかけは入学時にいただいた「藝大リベラルアーツガイド」です。参加を決めた理由は、美術教育研究室の実施する授業やワークショップの中でDOORとの接点があったことや、自身がこれまで美術教育の場で接してきた多様な人々との交流の記憶から、より様々な社会の在り方や問題意識を直接知る機会であると考えたことです。
 

②印象に残っている講義や実習
 私は他の授業や実技制作との兼ね合いから、講義系の授業のみに絞って履修しました。その中で特に印象的だったのはケアについての基本的な考え方を深く知ることができた「ケア原論」です。私はケアについて教職課程の範囲内で学習を終えていました。しかし実践については教育現場や親族との交流の場において自覚しないままに多くのことを行ってきました。ケアとはなんなのかを原点から見つめなおしていく授業を通して、自分が今まで行ってきたケアの実践について改めて思い起こし、多くの気付きがありました。
 「ダイバーシティ実践論」では、冒険家の荻田康永さんのお話がとても印象に残りました。行っていること自体も常識から外れすぎていて刺激的でしたが、それにも増してその目的意識が自身の制作とも通底しているように思えて興奮しました。
 「人間形成学総論」も印象的な講義でした。講義は普通、講師から知識や体系を教わることが中心になっていますが、人間形成学総論はすでにある自分の生をどう価値付けるかに比重が置かれた内省的で独特な講義でした。講義の合間に行われるディスカッションやワークも、受講者それぞれにとっての意味が大切にされ、受講者同士が自然と深い心の交流に踏み出せる場を創り出していたように感じました。
 その他にも魅力的な講義がありましたが、毎回授業の最後に行われる質疑応答での受講生の皆さんのお話にも印象深い内容が多く、アートと福祉をまたいで様々な方々の生き方、考え方を垣間見ることができたことも、自身の糧になったと感じています。
 

③仕事/生活/学業とDOORプロジェクトの両立について
 学業との両立にはそれほど困難は感じられませんでした。やむを得ず欠席した場合にも動画配信で講義を聞くことが出来ましたので、ほぼ履修したすべての講義内容を消化することができました。
 DOORの講師陣や受講生との集中的な交流は藝大だからこそ整えられている環境であると思います。芸術には専門的に一つを突き詰めることも必要ではありますが、せっかく藝大にいるのであれば、独学ではとても巡り合えないであろう様々な活動や社会の広がりを学生のうちに見渡すことで、自分の制作の意味を社会の中に相対的に見出すことにもつながると思います。

(2023年1月16日 公開講座トークセッションより)