ケア×フィールドワーク実践演習にて行った6つのチームによる企画のレポートを掲載いたします。
また、本授業の各授業回の様子をまとめた「授業レポート」は、本ウェブサイトの以下のリンク先にてご覧いただけます。
URL:https://door.geidai.ac.jp/curriculum-list2021/?y=2025#a3
1、【Yanaka Map for Cat Lovers】

<チーム名(テーマ)>
チーム異文化(外国人)
<見つけた地域の課題>
谷中の街には、あちこちに外国人観光客。そして猫、猫、猫。そんな強みがある谷中の街。一方で、ボランティアガイドさんから、「谷中は、浅草に比べてご案内が難しい。」そんなご意見も。「谷中の魅力を感じるツールが、もっとあったらいいな!」そんな想いからこの企画はスタートしました。
<企画・制作までの道のり>
他テーマと比較して専門機関の少ない「外国人」。日暮里近辺の街を散策することから始まりました。そんな時、外国人に向けたメッセージを掲載しているお寺を発見。お話を伺うと、「東京藝術大学から設置をお願いされたのです。」とのこと。去年のDOORの企画でした。そんな「ちょっと、がっかりした気持ち」の次に出会ったのが谷中の街でした。
谷中の街は、七福猫・猫に関するショップ・美術館はたくさんみつかるものの、本物の猫は1匹しかみつかりませんでした。東京藝術大学の学生(藝猫会)さんへのインタビューを経て、長年の保護活動の努力で野良猫が少なくなっている良い状況にあることがわかりました。
チームメンバーに猫好きのアーティストが在籍していたこともあり、「好き」、「楽しい」を原動力に谷中のショップや美術館の魅力を伝える猫マップの作成に決定しました。

<企画名>
Yanaka Map for Cat Lovers
<企画概要>
A3サイズの猫マップ(英語表記)。 表面:猫にまつわるお店や施設紹介。 裏面:谷中の猫街由縁、猫と日本の歴史や日本文化である折り紙を紹介。 掲載させて頂いた店舗様、道行く外国人の方に配布。
<全体を通してのチームの感想>
地域の「課題」というよりも地域の「強み」や、チームメンバーの「好き」、「楽しい」という気持ちを大事にフィールドワークを進めることができました。もともとチームで猫好きは、4人中1人でしたが、企画の後半には、全員が猫を好きになり、谷中の街を好きになっていました。その気持ちが作品に反映されたのか講評の時間では、「販売できるほどのもの。」という嬉しいお言葉を頂きました。また、作品を通して、「楽しさ」が伝わったようで、このチームのチームビルディングが評価されたのは、ありがたい記憶となりました。「楽しさ」というキーワードを大事にしながら、各々の活動にも活かしていければと想います。
▶︎猫マップのデータはこちらからダウンロードできます。
リンク先:yanaka cat map for cat lovers0120.pdf
(文責:異文化チーム)
2、【NOBOプロジェクト「あたらしい虹をつくろう」ワークショップ】

<チーム名(テーマ)>
NOBO for All(障がい)
<見つけた地域の課題>
フィールドワークを通じ、障がいの有無、年齢、性別などの違いで社会に見えない境界線が生まれやすいと課題感を共有しあった。境界線は当事者の違いそのものではなく、未知への不安や恐怖心から、心の中で引かれ、強められているのではないかと感じた。その結果、属性で人を捉えやすくなり、自然な交流や相互理解が進みにくい。互いを個として交われるきっかけが不足している。
<企画・制作までの道のり>
障がいに関心のあるメンバーが集まり、「境界線はどこにあり、誰が引いているのか」「無くすことはできるのか」という問いを共有した。結論を急がず、もやもやを言語化し、関係団体や現場に足を運んで五感で知る時間を重ねた。その中で、配慮を一方的に“壁を取り除く行為”として行うのではなく、相手を見て一緒に話しながら進むことが境界をやわらげると気づいた。そこで、対話・制作・鑑賞を自由に行える構成とし、多様な参加者が自然に交わるカフェ形式のアートワークショップを企画した。題材には、希望や幸運の象徴でありながら色の境目や解釈があいまいな存在である「虹」を選び、目でも手でも楽しめる、貼ってはがせるタイルを用いて共創しNo Borderだと感じられる瞬間を生み出す場を目指した。

<企画名>
NOBOプロジェクト「あたらしい虹をつくろう」ワークショップ
<企画概要>
多様な背景の参加者(就労移行支援事業所、就労継続支援B型事業所、フリースクール等)が参加するアートワークショップ。
• プログラム:対話/制作/鑑賞(カフェ形式)
• 作品:10cm四方のオリジナルアートタイルで作る一畳サイズのモザイクアート
• 素材:木・布・革・紙・リサイクル素材 等の廃材
• 画材:クレヨン・クーピー・色鉛筆・絵具 等
• 補足:別スペースで自由創作コーナーも併設し、参加方法の選択肢を確保
• 協力:台東区社会福祉協議会、画材循環プロジェクト「巡り堂」
<全体を通してのチームの感想>
活動を通して、境界線は完全に消えるものではなく、他者と自分が別の人間である以上、理解の及ばない困難や感じ方は確実に存在すると実感した。一方で、属性で線を引くのではなく、目の前の個人と向き合い、尊敬や興味を根底に関わることで、自分の中の分断は薄まり得るとも感じた。アートは正解や解釈を固定せず、手を動かし語り合う中で、境界がふっと滲む瞬間を生み出す。成果物の形が定まらない不安もあったが、急がず対話を重ねた時間そのものが私たちの成果となった。参加者の笑顔や言葉から希望を受け取り、福祉や社会がもっと柔軟になり得ると感じた。今後も立ち止まりながら、学びを次の関わりへつなげていきたい。
(文責:NOBO for Allチーム)
3、【アート×コミュニケーション(アートを介した親子の時間)】

<チーム名(テーマ)>
こそだてトリオ(子育て)
<見つけた地域の課題>
子育て当事者や児童館の皆さんへのインタビューを通して、台東区の池之端地域周辺は、経済的にはゆとりがある家庭が多い一方で、いわゆる共働き家庭が多く、仕事や家事など日々の忙しさから、親子でゆっくり過ごす時間や親子のつながりを生み出す余白が作れていないのではないかと考えました。
<企画・制作までの道のり>
「ゆっくり向き合う時間を取りにくい親子が、どのように繋がりを育むことができるか」。そんな問題意識から企画が始まりました。忙しい毎日の中でも、親子が一緒に楽しみ、互いを想う時間をそっと作れたらいい。そんな想いを形にするため、池之端児童館の皆さんに力をお借りし、「親子」をテーマにしたアートワークショップを2回開催しました。アートを介することで、普段は言葉にしづらい気持ちも自然とあふれ、親子で向き合うきっかけになるはず。親子を想い合い、互いに見つめ合い、ふと心が近づくような時間を生み出したいという想いが、この企画の道のりを支えてきました。

<企画名>
アート×コミュニケーション(アートを介した親子の時間)
<企画概要>
(1)ワークショップ①「おうちの人の顔を作ってみよう」
小学校低学年のこどもたちを中心に、コースターやボタン、毛糸などを材料にして、家族の顔を想い浮かべながら作ってもらいました。その過程において、こどもたちからどんな感情や言葉がでてくるのか、成果物よりプロセスを重視して進めていきました。
(2) ワークショップ②「おうちの人の『ホントの顔』を描いて、大きな絵本にしてみよう」
15組の親子(園児)を対象に、まずは1分間、向き合ってお互いの顔をじっくりみたあと、模造紙を広げ、それぞれの顔を描き合ってもらいました(ゆびえのぐ使用)。
今回は、「親子で見つめ合う時間」、「親子で対話する時間」を重視して進め、それぞれの家族の想いや関係性が反映された多様な作品が生まれました。
【最終展示】
①おうちの人の顔アートパネル(ワークショップ①作品を写真で構成して印刷展示(B2))
②おうちの人の顔絵本(ワークショップ②作品現物をつなげて、1冊の絵本として展示(A0))
③想いの言葉パネル(語られた言葉をタイポグラフィ表現へと変換し、印刷展示(B2))
<全体を通してのチームの感想>
今回の活動を通して、「アートとは何だろう」と何度も立ち止まりました。作品そのものが大事なのか、そこに至るまでの時間や親子の対話(言葉)が大事なのか、迷いながら動いていく中で、制作過程を通してふと生まれた言葉こそ、私たちが表現したい本質に近いのではと感じました。その言葉を形にして展示することが、私たちなりの“アートの可視化”だったのかもしれません。アートには決まった答えがないことにも気づきました。親子が顔を見つめ合い、言葉を交わすそのプロセスこそが大切で、完成した作品がそれぞれの家族の心の中で小さな結び目のように残ればうれしいです。
(文責:こそだてトリオチーム)

