大川よしえさん(5期生)
(薬剤師・アートコミュニケータ/2021年度受講)
アートで工夫をすることで、誰かのチャレンジを応援できることがある

 

①DOORプロジェクトへ参加した(知った)きっかけ

受講したきっかけのひとつはオンラインでも受講ができるという点です。もうひとつは、子どもとその家族、また医療を必要とする人たちにアートとの関わりってどんなことがあるんだろう、と深掘りして勉強したいと思ったからです。私は東京都美術館と藝大が行っているとびらプロジェクトのアートコミュニケータ(とびラー)として美術館での活動経験があります。それまでは主婦としての生活が長く、何か課題を抱えると一人で悶々とすることが多かったのですが、活動の中で出会う人たちとのつながりの面白さ、様々なスキルから非常に刺激を受けました。作品の対話型鑑賞やワークショップを行う際も、どんな方が参加されるかということを考えながら、安心してコミュニケーションがとれる場を作っていくということも学びました。その後とびラーを卒業して自分たちの活動の場を求めていく中で、ちょうどコロナ渦になってしまいました。しばらくすると世界のいろんな美術館がオンラインで作品の情報を提供するようになり家にいながら作品を楽しめるようになり、それならばオンラインでの鑑賞会が場所を気にせずできるのかな、ということで医療に関わる方々のグループや障害をお持ちのお子さんや親御さんと一緒に鑑賞会を実施。それとは別に、ソフト開発をする人たちとツールを開発中なのですが、これはアート作品をマッピングしてあるので出かけることができない人でも利用できるものにもなっています。そんなことを考えているうちに、もっといろんなことを勉強しなきゃいけないな、背景にある病気だったり、置かれている環境だったりをもっと学びたいと思い、現在DOORを受講しています。

 

②印象に残っている講義や実習

どの授業も当事者のリアルな声を聞けて心がはっとすることが多く興味深く受講できました。印象に残った授業はいくつかありますが、木炭デッサンの授業で藝大生のように手を動かす体験ができたことは面白かったです。一番インパクトがあったのはプログラム実践演習です。サッカーの天皇杯に向けて、感覚過敏がある子どもたちが安心してサッカー観戦できる環境を整えるという授業です。私たち受講生だけでなく、日比野先生やデザイン科の橋本和幸先生、子どもたちを見守る専門の方たちと一緒にアイディアを出し合ってものを作っていく。制作したプロトタイプからさらに実際使えるものに仕立て上げていくという一連の流れを体験できたことはすごく勉強になりました。12月19日の天皇杯当日、非常に楽しみに来てくれたお子さんやご家族の様子を見たら、こういったアートで工夫をすることでなにか誰かのチャレンジを応援できることというのはあるんだなと実感しました。今、病院で働いているんですけれども、いろんな場面で子どもたちを応援できるような展開をしていきたいなと勇気をもらいました。

 

③仕事とDOORプロジェクトの両立について

DOORに出願書類を送ったときには就活中でした。DOORの受講がスタートした後に新しい仕事が決まり、最初は両立に不安もありました。ですがなんとか一年続けることができました。学びからの視点が増え、仕事や暮らしの中での気づきになることが面白かったからです。DOORが気になる方は、ぜひ一歩踏み出して授業を体感していただければと思います。