菅野 美音さん(藝大生)
(美術学部デザイン科学生/2020年度受講)
「いかに芸術が福祉に関わっていけるか、 ウェルビーイングに繋がっていけるか」

①DOORプロジェクトへ参加した(知った)きっかけ
自分自身が研究したいと思っていることとDOORの授業が重なったからです。芸術というと技巧的に上手いかどうか、美しいかどうか、面白いかどうかといった基準で見ることが多いかと思います。芸術のまなざし方には、そういった「モノ」的な見方をする軸もあれば、「コト」的な見方をする軸もまたあります。どのような人々が芸術活動に参入していけるのか、そこにはどのようなコミュニケーションがあるのか、そこにはどんな時間があるのか、などという視点を得る見方です。私はこのうち後者の見方に非常に興味があり、そのような見方をすることによって「いかに芸術が福祉に関わっていけるか、ウェルビーイングに繋がっていけるか」ということを考えていけるのではないかと思っています。こういった関心が前提としてあったためにDOORに飛び込みました。

 

②印象に残っている講義や実習
一番印象に残っているというか、モヤっとしているのは「人間形成学総論」という教育学の授業です。とても哲学的な授業で、色々なことを問い直して掘り起こして再度深いところに潜って行くような場でした。決して正解的な答えを提示されるような場ではなく。人間形成ってなんだろう、生きるってなんだろう、教育ってなんだろう…たくさんの問いがあの場にはあったように思います。「学ぶことは教育を受けることとイコールではない」という話があったこと、避けては通れないナチスの歴史に深く潜り込んで行ったことなど印象的なトピックも多かったですし、生きることと学ぶことの結びつきの強さに気づかされて、今まで以上に学ぶことが楽しくなったという変化も自分の中で起きました。あの数日間で得た問いは今もなお咀嚼し続けています。

 

③仕事とDOORプロジェクトの両立について
DOORの授業の方が興味深く感じてしまって、本科がおざなりになっているという状況ではありますが(笑)、ここで考えたことは、本科のデザイン科での活動にも強く作用しているような気がしています。私にとってデザイン科は「作ること」を基本として試行・思考していく場であるのに対して、DOORは作る「以前」を考える場だったりします。作ることって一体なんだろうとか、デザインってなんだろうとか、デザインする対象をどこまで広げていけるんだろうかとか。そういった問いを毎時間投げかけられているように感じていました。
(2021年1月 DOOR公開講座トークセッションより)