かんなくず温泉

3期生 小河原いづみ・工藤亜希子

「かんなくず温泉」はかんなくずをお湯にみたてて浸かるというシンプルなワークショップです。
これは、プログラム実践演習という授業の中で生まれました。
日本の伝統技術で削られる「かんなくず」は芳醇な木の香り、複雑な木目の美しさ、滑らかな手触り、衣擦れのような音など素材の力に満ちています。
このワークショップでは全身でその素材力を味わうことができます。
年齢性別問わず、誰もが気軽に入浴でき全ての人をフラットな関係にします。
 このような「かんなくず温泉」に可能性を感じ、DOOR修了後は改めて修了生2名で様々な場所でワークショップを行っています。
商店街で行った際は、会社員、青年から親子連れ、年配の方までその街に住む幅広い層の方々にご参加いただきました。
ダウン症のある子供と親の会では、コロナ禍で親子で出かける機会が減っている今、家族風呂企画を行いました。4ヶ月の赤ちゃんから高校生までの親子にご参加いただき、大人も子供もなく家族ではしゃぐ姿が見られました。
高等特別支援学校では、かんなくずをかけあったり埋もれたりと生徒同士が協力して遊び方を見つけ出していました。普段の授業ではなかなかな見られないかんなくずを使ったダイナミックな活動を楽しむ様子が見られました。
みな大量のかんなくずを前にすると感覚を刺激され、ある種の高揚感が生まれ全身でかんなくずを感じます。
そして目の前のかんなくずを手に取り、思いのままに遊び出します。
かんなくずは、割く、丸める、編む、巻くなどといった単純な手作業で簡単に形が整い、リースやお花、オブジェ等の作品になっていきます。
かんなくずを介した距離感と、木の香りに包まれた空間は参加者たちに連帯感、安堵感を与え緊張を伴わない適度な集中を生み出します。
 今後も新たな場所でのワークショップを予定しています。
場所、対象が変わっても「かんなくず温泉」は柔軟に対応できると信じ、展開していければと思っています。
かんなくずはもともと廃棄処分されてしまう物です。廃棄ではなく、使い切るサイクルを作りたいと考えています。ワークショップで使用するだけにとどまらず、使用後のかんなくずの肥料などへの転用や防虫剤としての利用も試みているところです。
「かんなくず温泉」に入ると、参加者は楽しみながら環境の大切さを実感するはずです。材木加工業のかかえる廃棄問題の解消につながる廃材のリサイクル、そして、かんなくずの新たな価値の創出と言うアップサイクルにつなげていく軸になりたいと思っています。
今後も多くの人を惹きつけ、巻き込んで行く未来を見つめたワークショップとなるよう活動を続けていきたいと願っています。