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2019
6/10

ケア原論1「介護の成り立ちと目的論」

講師: 飯田大輔(社会福祉法人 福祉楽団 理事長)
この講義では看護・介護の原論を扱います。「ケア」は配慮、気遣い、世話など多義的な意味合いのある言葉で、美術においてはキュレーター・キュレーションの語源でもあります。現状大学で介護・ケアの原論が語られるのは、おそらくDOORプロジェクトだけでしょう。

介護と看護、英語ではどちらもNursingと表現されます。近代看護を確立させたのはF・ナイチンゲールです。彼女の主著である「看護覚え書」には、すべての病気は、回復過程である、という記述があります。医療は病気を治療するものですが、Nursingは生理解剖学に基づき、自然の回復力が患者に働きかけるに最も良い状態に置くこと、患者の生命力の消耗を最小にするように生活を整えることが「ケア」の役割です。

飯田さんはお題を出します。『インフルエンザに感染し発熱した90代の寝たきりの女性の家に訪問介護に行くとしたらどんなケアをする?』受講生は一人一人答えます。身体を拭く、水分を摂らせる、窓を開ける…。「なぜそのケアが必要なのか?」「水分とは具体的にはなにを?どのように?なにを?温度は?」「身体のどの部分から拭く?それはどうして?」…飯田さんはさらに具体性と根拠を求めます。やりとりを通じて、ケアだと思っていることが、主観的な思い込みであったり、知識としては正しくとも状況に即さない場合があること、思いやりや優しさだけでは自己本位に陥りかねないことなどが浮かび上がります。

では、良い看護・介護とは?目の前の人/その人がいる環境から、介護・看護者が観察し、自ら考え、判断すること。それこそがナイチンゲールが語る「看護の芸術性」であり、美術における創造がはじまる時と繋がっています。

芸術と福祉は、療法やレクリエーション・交流の機会の提供など機能としての表面的な関わり方に留まらず、「創造性」という根源において通底していることに気付かされました。

講師プロフィール

社会福祉法人 福祉楽団 理事長

飯田大輔

1978年千葉県生まれ。東京農業大学農学部卒業。日本社会事業学校研究科修了。千葉大学看護学部中途退学。千葉大学大学院人文社会科学研究科博士前期課程修了(学術)。
2001年、社会福祉法人福祉楽団を設立。特別養護老人ホーム等の相談員や施設長などを経て、現在、理事長。
2012年、障害のある人にきちんとした仕事をつくるため株式会社恋する豚研究所設立、現在、代表取締役。京都大学こころの未来研究センター連携研究員、東京藝術大学非常勤講師。
主な論文に「クリエイティブなケア実践の時代へ 『ケアの六次産業化』という視点」(週刊社会保障第2782号)。
介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士。