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  • ダイバーシティ実践論
2017
11/13

アーティストの活動・文化事業から考える3「ダイバーシティとBeyond2020」

講師: 太下 義之(三菱UFJリサーチ&コンサルティング芸術・文化政策センター主席研究員/センター長)
文化庁は、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けて、史上最大規模の文化プログラムに取り組んでいます。ロンドンオリンピックを上回る数値目標を掲げ、日本の文化の魅力を広く世界に発信する文化プログラムの紹介から講義が始まりました。

文化政策において重視されている文化多様性という概念は、各地固有の文化や多文化主義をグローバル化から守ることに主眼を置いています。9.11以降、イスラム文化の理解を進めようと、ヨーロッパの美術館や博物館ではイスラム関連の展覧会が急速に増えました。文化的な相互理解を促すためにも必要な概念として、ユネスコの総会で文化多様性条約が採択されましたが、アメリカとイスラエルはこれに反対していることからも、現代の国際政治の課題が色濃く現れていることがわかります。

IOCが重視している、レガシー(過去から現在、現在から未来へ継承していく遺産)をどうやって残すのかも切実な課題です。

1964年東京オリンピックのレガシーは、交通インフラや建築物などのハード面の整備が思い出されますが、ソフト面の充実もありました。代表的なものが、亀倉雄策さんがデザインしたポスターが注目され、これ以降デザイナーという職業が確立する契機となりました。成熟した国がオリンピックを開催する意義はどこにあるのか。ロンドンオリンピックでは「文化」をあげました。2020に向けた文化芸術の振興に関する基本的な方針では、文化芸術立国の姿を掲げるとして「文化芸術に従事するものが安心して、希望を持ちながら働いている」ことを盛り込み、閣議決定されました。

今後ますます発達するAIについても触れられました。文化芸術に従事するものとして、AIとの関係を重視すべきとした上で、無くなる職業がたくさんあるが、生まれる職業もたくさんある。人間だけにできること、より人間性に回帰していくのではないか。それにとってアートは極めて有効であると思う、と語りました。

講師プロフィール

三菱UFJリサーチ&コンサルティング芸術・文化政策センター主席研究員/センター長

太下 義之

専門は文化政策。博士(芸術学)。独立行政法人国立美術館理事、公益社団法人日展理事、公益財団法人静岡県舞台芸術センター(SPAC)評議員、公益社団法人企業メセナ協議会監事。文化経済学会<日本>監事、文化政策学会理事、コンテンツ学会理事、政策分析ネットワーク共同副代表。文化庁文化審議会文化政策部会委員(~2016.3)、観光庁「世界に誇れる広域観光周遊ルート検討委員会」委員。東京芸術文化評議会委員、大阪府・2025年万博基本構想検討会議委員、オリンピック・パラリンピック文化プログラム静岡県推進委員会委員、沖縄文化活性化・創造発信支援事業(沖縄版アーツカウンシル)アドバイザリーボード委員(~2017.3)。京都市「東アジア文化都市2017実行委員会」委員、鶴岡市食文化創造都市アドバイザー、アーツカウンシル新潟アドバイザー。東京文化資源会議幹事、著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム発起人、など文化政策関連の委員を多数兼務。