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2020
1/20

ダイバーシティ実践論13「 聖人とバイアス~課題解決型クリエイティブが思考停止を破壊する~」

講師: 澤邊 芳明(株式会社ワントゥーテン 代表取締役社長)
近未来クリエイティブ集団「1→10」(ワントゥーテン)を率いる実業家である澤邊さん。18歳のときバイク事故に遭い、首の四番目の骨の神経を損傷し、それ以降、下半身不随となりました。

「二度と手足が動かない身体になる」と医師に宣告されても、澤邊さんは自分に限ってそんなはずはないと、2年間ものあいだ懸命なリハビリをおこないました。それでも治らないという現実を徐々に理解しだしたとき、自分は働けないのではないかとまず思い、「退屈はヤバい」ということを痛感したといいます。

その後、澤邊さんは大学に入学。24歳、大学在学中に「1→10」を立ち上げました。「1→10」は、世界初の感情をよみとるロボット「Pepper」の開発に携わり、そして、歌舞伎史上初めてとなる人体センシングとプロジェクションマッピングを活用した演出を手掛けたり、さらにはパラリンピックの競技に「VR」や「5G」などのデジタルテクノロジーを組み合わせて「CYBER SPORTS」という体験を開発したりと、テクノロジーを用いて次々と挑戦的なエンターテイメントを世に打ち出しつづけている企業です。

そのような企業「1→10」を運営していく中で澤邊さんは下半身不随であることをつい最近まで隠してきました。その理由を「障害者という記号をとおしてみられることを避けたかった」と語ります。「1→10」のプロジェクトにおいても、記号というバイアスを取り除くことが重要です。思索をうみだしながら課題解決へと向かうための事業を行うには、あたり前だと思ってしまう社会の課題をみつけるためにバイアスを介さない眼差しが必要だというのです。

「CYBER SPORTS」の開発も、「障害者のスポーツ」といった従来の認識の傾向に潜む課題を顕在化させ、パラスポーツを人をわくわくさせるエンターテイメントにすることで、その課題を解決しようとする仕事だと思いました。澤邊さんの人生のなかで感じた「退屈のヤバさ」は、これから産業の合理化や、自動化がすすむことによって私たちの課題になると澤邊さんは予見します。「退屈をどう扱うかがこれからの未来で大切なこと」と語る澤邊さんの熱意が、どのような未来をつくっていくのかこれから注目していきたくなりました。

講師プロフィール

株式会社ワントゥーテン 代表取締役社長

澤邊 芳明

東京2020オリンピックパラリンピック競技大会組織委員会アドバイザー
XR と AI に強みを持つ、総勢約200名からなる近未来クリエイティブ集団1→10(ワントゥーテン)を率いる。

現在は、パラスポーツとテクノロジーを組み合わせた「CYBER SPORTS プロジェクト」や、
日本伝統文化をアップデートする「ジャパネスクプロジェクト」を行い、市川海老蔵七月大歌舞伎の歌舞伎座でのイマーシブプロジェクションマッピングや、旧芝離宮恩賜庭園や名古屋城、東寺でのライトアップイベントなど、エンターテインメントによる地方創生を推進している。