野沢 和弘(のざわ かずひろ)
毎日新聞論説委員。1959年静岡県出身。早稲田大学法学部卒業。毎日新聞入社。津支局、中部報道部、東京社会部。薬害エイズ取材班、児童虐待取材班などを担当。科学環境部副部長、社会部副部長を経て、2007年5月から夕刊編集部長を経て、2009年4月から現職。社会保障審議会障害者部会委員、内閣府障害者政策委員会委員、植草学園大学客員教授、上智大学非常勤講師など。主な著書に「あの夜、君が泣いたわけ」(中央法規)、「条例のある街」(ぶどう社)など。
御代田太一(みよだ たいち)
社会福祉法人グロー 救護施設 生活支援員
1994年神奈川県横浜市生まれ。東京大学教養学部卒。在学中、障害の世界に関心を持ち、障害のある当事者をゲストに招き講義を展開する「障害者のリアルに迫る」東大ゼミの運営や、障害者支援の現場実習、高齢者の訪問介護などを行う。卒業後、滋賀県の社会福祉法人に就職し、救護施設「ひのたに園」にて勤務。
今井出雲(いまい いずも)
東京大学文学部第4学年在学中。
社会福祉法人一路会 生活困窮者自立支援事業所 市川市生活サポートセンター「そら」相談支援員
1995年東京都生まれ。自らの当事者性を出発点に「障害者のリアルに迫る東大ゼミ」の運営に携わったことをきっかけとして障害の世界に興味を持つ。福祉現場での障害者の介助を行うかたわら、2018年には365日24時間の総合相談支援を行う中核地域生活支援センターがじゅまると現在の勤務先そらでの長期インターンを行う。2019年4月より、大学に在学しつつ相談支援員として勤務している。
- 必修科目
- ダイバーシティ実践論
2020
1/13
ダイバーシティ実践論12「長い夜のむこうに」
講師:
野沢和弘 / 御代田太一 / 今井出雲()
今回のゲストは「障害者のリアルに迫る東大ゼミ」から、ゼミの顧問講師の野沢さん、ゼミ出 身で現在は救護施設で生活支援員として働かれている御代田さん、同じくゼミ出身で生活困窮者 自立支援事業所で相談支援員をされている今井さんをお招きしました。「長い夜のむこうに」と 題し、御代田さん、今井さんが福祉に関わる現場から感じるリアルについての話を伺いました。
御代田さんは学生時代ゼミでの体験の中で仕事として福祉に関わることを意識したそうです。 福祉の仕事の中で日常では出会えない人と出会える感覚と、現場で起きていることはとても複雑 で、それがとても豊かであると感じられています。 救護施設では様々な強烈な物語を経験してきた人たちと接している。彼らと接する時、社会のリ アリティーの最前と接しているという感覚があるそうです。
「過去の自分は社会の最前線の、強い方がいい、早ければいい、という世界に憧れていた。就職 活動や今後の人生を考えた時、本当の社会のリアルはどこか他にあるのではないか。どこかでこ れで本当にいいのか…」と悩んだことがあったそう。 「今の自分は本当の社会とゼロ距離で接しられているという感覚がある。」と語られました。
今井さんは高校時代から自分の性への違和感から、生き辛さを感じていました。 東大に入ったら誰にも文句言われないだろうと進学しましたが、学校という性別による環境分け が当たり前にある中で、入学してもなおその苦しさが続き、社会ってなぜこんなに生きづらいの だろうか。ということに憎しみの感情を持つこともあったそうです。 生活困窮者支援員として地域社会という舞台で様々な境遇の人たちと出会い、彼らの現在地点か ら見える世界に触れてこられた中で、「他者の理解は継続して関わる中でゆっくり理解が深ま る。」「インクルージョンという言葉が近年登場しているが、多様性というのは我々のすぐ隣に ある。この街にある。」とお話しされました。
この世界にはいろんな正義があり、それらに接するとみんな説得力がある。人は弱いからこそ バラエティーに富んでおり、これからはみんな同じような働き方の時代ではなくなってきてい る。我々は人間の価値をもう一度考えなくてはいけない。と最後に野沢さんは語られました。 私たちが長い夜を旅する中で、まだ見ぬ未知のリアリティと出会いたいという思いが「長い夜 のむこう」への扉を開く鍵になるのではないでしょうか。
御代田さんは学生時代ゼミでの体験の中で仕事として福祉に関わることを意識したそうです。 福祉の仕事の中で日常では出会えない人と出会える感覚と、現場で起きていることはとても複雑 で、それがとても豊かであると感じられています。 救護施設では様々な強烈な物語を経験してきた人たちと接している。彼らと接する時、社会のリ アリティーの最前と接しているという感覚があるそうです。
「過去の自分は社会の最前線の、強い方がいい、早ければいい、という世界に憧れていた。就職 活動や今後の人生を考えた時、本当の社会のリアルはどこか他にあるのではないか。どこかでこ れで本当にいいのか…」と悩んだことがあったそう。 「今の自分は本当の社会とゼロ距離で接しられているという感覚がある。」と語られました。
今井さんは高校時代から自分の性への違和感から、生き辛さを感じていました。 東大に入ったら誰にも文句言われないだろうと進学しましたが、学校という性別による環境分け が当たり前にある中で、入学してもなおその苦しさが続き、社会ってなぜこんなに生きづらいの だろうか。ということに憎しみの感情を持つこともあったそうです。 生活困窮者支援員として地域社会という舞台で様々な境遇の人たちと出会い、彼らの現在地点か ら見える世界に触れてこられた中で、「他者の理解は継続して関わる中でゆっくり理解が深ま る。」「インクルージョンという言葉が近年登場しているが、多様性というのは我々のすぐ隣に ある。この街にある。」とお話しされました。
この世界にはいろんな正義があり、それらに接するとみんな説得力がある。人は弱いからこそ バラエティーに富んでおり、これからはみんな同じような働き方の時代ではなくなってきてい る。我々は人間の価値をもう一度考えなくてはいけない。と最後に野沢さんは語られました。 私たちが長い夜を旅する中で、まだ見ぬ未知のリアリティと出会いたいという思いが「長い夜 のむこう」への扉を開く鍵になるのではないでしょうか。