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2017
7/10

共生社会を考える10「クリエイティブサポートレッツの取り組み」

講師: 久保田 翠(認定NPO法人 クリエイティブサポートレッツ 理事長)
久保田さんは藝大大学院の出身で、出産するまでは福祉にはあまり興味を持ってこなかったそうです。息子のたけしさんは、重度の知的障害を持ち、食事や排泄も一人ではできません。
「働くため、学童保育の申し入れに行った役所に、受け入れができないと言われたことに愕然とした。障害を持つ子の母になった途端に、社会から孤立した。私とたけしと家族の居場所を作ろうと思った。」
2000年にクリエイティブサポートレッツを設立。2008年から「たけし文化センター」をスタートします。この事業は、たけしさんを基準に運営体制を構築することが方針です。経歴や職業といった概念を外し、その人が熱心に取り組むことに敬意を払い、受け入れることを大切にしています。

誰も排除しない場として、2010年から障害福祉施設「アルス・ノヴァ」を開設。ここでもあえて仕事を明確にせず、個人がやりたいことをやる、ということを尊重しているそうです。他にも「表現未満、」や「しえんかいぎ」などたくさんの活動を紹介していただきました。レッツの活動で共通することは、個人のやりたいことを尊重することだと感じました。

たけしさんはタッパーに石を入れて、それを叩くことが好きで、飽きることなくそれをやり続けます。叩くと音が出るので、それをうるさいと感じる人もいます。問題行動として、それをやめさせることは簡単ですが、その行動をその人の特性と捉え、やり続けられる環境をつくる。
問題行動は、見方を変えると何かに熱心に取り組んでいることでもあります。知的障害、自閉症、行動障害というような病名では、その人の像が見えてきません。「人間としてその人を見ることは福祉の醍醐味であるし、見方を変えるとアートともいえる。彼らの存在が社会を変えるきっかけになるのでは。」と久保田さんは語ります。

アートとは、わからないことを、そのままにしてよいもの。わからないことを考えていくこと。福祉の現場でも、彼らの営みの中にわからないことを考えていく要素がたくさんあるのではないかと感じました。

講師プロフィール

認定NPO法人 クリエイティブサポートレッツ 理事長

久保田 翠

1962年生まれ。静岡県浜松市在住。武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業後、東京芸術大学美術学部大学院環境デザイン科修了。有限会社アムズ設立。長女誕生をきっかけに、高木滋生建築設計事務所。静岡大学農学部非常勤講師(1998〜2010)。障害のある長男の出産を機に、2000年にクリエイティブサポートレッツ設立。2004年NPO法人化。20014年認定NPO法人化。2008年より、個人を文化創造の拠点とする「たけし文化センター事業」をスタート。2010年、障害のある人、子どもが毎日が通う通所型障害施設アルスノヴァを設立。(生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援B型、放課後等デイサービスを実施)。2014年、誰もが利用できる私設公民館「のヴぁ公民館」開所。