• 必修科目
  • ダイバーシティ実践論
2017
7/3

共生社会を考える9「刑務所のリアル 生活に苦しくて、罪を犯した障がい者と高齢者のことを」

講師: 田島 光浩(社会福祉法人 南高愛隣会理事長)
データと映像、実際の活動を交えて、刑務所における現状をお話しくださった。

年末は、刑務所の人口が増える、という一見奇妙なデータが紹介されました。その背景には、社会より刑務所にいたいと考える人の存在がありました。再犯防止のための懲罰施設である刑務所ですが、刑務所外(社会)に居場所を見いだせず、刑務所に暮らしやすさを感じ再犯を繰り返してしまっている者がいるのです。また、受刑者の知能指数データから、軽度の知的障害が見られる人の1年未満の再犯率が、69.2%と高いということも見えてきたといいます。そういった累犯障害者の犯罪は、万引きなどの軽微なものであるということからも、刑務所が彼ら彼女らにとってのセーフティネットとなっている現実が浮かび上がります。刑務所よりも福祉を必要としている人が、出所したときに福祉とつながり、地域社会に受け入れられるよう、「出口」における福祉と司法の連携が必要であると田島さんらは調査チームを作り、結果を報告、実際の活動の推進をしてきました。同時に、障害が見過ごされたり、不当な取り調べが行われるといった「入り口」での問題もあります。実際に、知的障害者や、それを疑われる受刑者のうち、療育手帳を持っているのは6%程度。障害などを理由に社会に生きづらさを感じていることが犯罪や累犯につながりやすいという事実を、司法をはじめ広く理解を広げ、懲役のあり方や地域での受け止め方も変えていくことが必要と指摘しました。環境が変わることで状況が変わることの一つとして、DOORで学ぶべき大切な視点と感じました。

講師プロフィール

社会福祉法人 南高愛隣会理事長

田島 光浩

1. 専門領域
 精神科 精神医学一般
 精神保健指定医、日本精神神経学会認定医
2. 経歴
   平成13年  北里大学医学部卒
   平成13年4月 北里大学東病院精神神経科 勤務
   平成15年4月 国立病院機構 相模原病院精神科 勤務
   平成17年10月 北里大学東病院精神神経科 勤務
   平成19年7月 医療法人厚生会 道ノ尾病院 精神科 勤務
   平成22年7月 社会福祉法人 南高愛隣会 勤務
   平成23年4月 ひかり診療所 院長
        ACT(包括型地域生活支援プログラム)を実施
   平成25年11月 社会福祉法人 南高愛隣会 理事長
3. 主な業績
平成22年度障害者総合福祉推進事業
「精神障がい者地域移行支援に資する普及啓発及び研修プログラムの開発事業」
 主任研究者
   平成27、28年度老人保健健康増進等事業
   「刑務所出所者における認知症者の追跡調査と福祉的支援等の課題解決に向けた司法と福祉の試行事業」主任研究者