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  • ダイバーシティ実践論
2017
5/8

共生社会を考える1「弱いロボット」

講師: 岡田 美智男(豊橋技術科学大学 教授)
弱いロボットとは、どんなロボットなのか。ロボットというと、完璧に間違いなくタスクを実行してくれるというイメージですが、弱いロボットは弱さをチカラにするロボットです。例えば、目の前にゴミが落ちているけど、拾うことができないとか、ティッシュを持って通行人に手渡そうとするが、タイミングが合わず渡せないとか。人が思わず手助けしてしまう、不完全だけどなんだか可愛い、放っておけないロボットです。

ひとりでは何もできないけれど、周りを巻き込むことで、何かができてしまう。弱くも、たくましいロボット。これはそのまま、人間同士のコミュニケーションにもつながります。弱さを補い合い、互いの強みを引き出しあう。強がりを期待するのではなく、弱さを上手に開示できる関係。誰かに手伝ってもらうことは嬉しいことで、誰かの助けになることもまた嬉しいこと。

ケアをしつつ、ケアされる関係性が広がっていくことが共生社会につながっていくことだと岡田先生。「ひとりでできるって、そんなにすごいことなのか?」
ロボットも人も、完全である必要はない、と語りました。

講師プロフィール

豊橋技術科学大学 教授

岡田 美智男

1960年生まれ。東北大学大学院工学研究科博士課程修了。NTT基礎研究所情報科学研究部にて音声認識、自然言語処理、プラン理解などを統合する音声言語システムの研究、生態心理学や状況論的なアプローチに基づいた非流暢さを伴う発話生成機構の研究を行う。95年より国際電気通信基礎技術研究所(ATR)に移り、ソーシャルなエージェント「トーキング・アイ」やソーシャルなロボット「む~」を開発。2006年より現職。 主な編著者に、『〈弱いロボット〉の思考 わたし・身体・コミュニケーション』(講談社現代新書)、『弱いロボット』(医学書院)、『ロボットの悲しみ コミュニケーションをめぐる人とロボットの生態学』(新曜社)、『口ごもるコンピュータ』(共立出版)など