• 必修科目
  • ケア原論
2022
10/24

ケア原論9「認知症とともによりよく生きる今と未来に向けて ~「認知症の人が生きている世界」を手がかりに~」

講師: 堀田 聰子(慶應義塾大学大学院 健康マネジメント研究科 教授)
ケア原論第9回では慶應義塾大学大学院 健康マネジメント研究科より堀田聰子さんにお越しいただき、認知症とともによりよく生きる社会づくりについてお話しいただきました。

認知症とは、どういったものでしょうか。
「一度正常に達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続性に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態を言い、それが意識障害のないときにみられる」と 『認知症疾患治療ガイドライン』には定義づけられています *。

堀田さんがリーダーを務められている認知症未来共創ハブは、認知症のある方の想いや体験を中心に、様々な立場の方々と一緒に認知症と共によりよく生きる今と未来を作っていこうという活動体です。

特に力を入れている活動は、認知症と共に生きる生活モデルを探索することを目的とした認知症当事者インタビュー&参加型パネル。
認知症の方がもつ生活の喜びや生活のしづらさなどをご本人に伺い、体系化し、形式知として整理をし、商品やサービスの開発、政策提言などに繋げられています。
ハブで開催するワークショップでは、さまざまな障害を持った方にも参加していただいているのだといいます。これは「診断名を越えて同じようなことに困る人はいらっしゃるかもしれない」と考えたためで、一般に「症状」と言われるものを広く「認知機能の困りごと」、「同じような困りごと」と捉えられています。

「生活に支障をきたす状態」を認知症とするならば、認知症を定義づけるのは「社会」、すなわち私たちひとりひとりの考え方や制度などであるとも考えられます。「社会がアップデートしていったら相対的に支障は減る。だからご本人とともに社会をアップデートすることに取り組んでいけたらと思っているし、その手がかりとしてまずはご本人の”やってみたいこと”に一緒に取り組んでみる」と今後の想いを語られました。

* 日本神経学会監修による(2010)。

講師プロフィール

慶應義塾大学大学院 健康マネジメント研究科 教授

堀田 聰子

京都大学法学部卒業後、東京大学社会科学研究所特任准教授、オランダ・社会文化計画局研究員 兼 ユトレヒト大学社会行動科学部訪問教授等を経て2017年4月より現職。
認知症未来共創ハブ・リーダー。博士(国際公共政策)。
社会保障審議会・介護給付費分科会及び福祉部会等において委員を務め、より人間的で持続可能なケアと地域づくりに向けた移行の支援及び加速に取組む。
中学生の頃より、おもに障害者の自立生活の介助を継続。訪問介護員2級/メンタルケアのスペシャリスト。
日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2015リーダー部門入賞。

筧裕介著『認知症世界の歩き方』ライツ社(2021)を監修、共監訳に『コンパッション都市』慶應大学出版会(2022)、主たる共著に『ヘルパーの能力開発と雇用管理』勁草書房(2006)、単著に『オランダの地域包括ケア-ケア提供体制の充実と担い手確保に向けて』労働政策研究・研修機構 (2014)、「介護保険事業所(施設系)における介護職のストレス軽減と雇用管理」『季刊社会保障研究』(2010)(第12回労働関係論文優秀賞)等。