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2022
10/17

ケア原論8「非行少年をケアする地域ボランティア」

講師: 西﨑勝則 / 狩野修(法務省 保護局総務課企画調整官 / 横浜西区BBS会会員 兼 保護司)
「非行少年をケアする地域ボランティア」というテーマのケア原論第8回にご登壇いただいたのは、法務省保護局の西﨑勝則さんと、BBS会会員兼保護司の狩野修さんのお二人です。西﨑さんは保護観察官の職務を経て、現在は法務省保護局総務課にて企画調整官として活躍されています。また狩野さんは、本業では会社員として勤務をしながらも日々BBS会会員・保護司として保護観察対象者と向き合われています。

今回は更生保護に関わる基本的な制度と活動の紹介に加え、お二人の対談を通して地域ボランティアが非行少年・犯罪者をケアすることの意義について考えていきました。

更生保護とは、犯罪をした人や非行のある少年の立ち直りを支え、社会を保護し個人と公共の福祉を増進しようとする活動のことです。BBS会(Big Brothers and Sisters Movement)と保護司は、どちらもこの更生保護を担う民間ボランティアのひとつ。更生保護は地域の中で行われるものであることから、対象者を取り巻く地域社会の事情をよく理解した方の力が必要です。そのために民間のボランティアという形が必要とされるのです。
令和2年のデータによると、保護観察処分少年の再処分率は16.3%、少年院仮退院者の再処分率は19.5% *という数字が出ています。これは裏を返すとそれぞれ83.7%・80.5%の対象者が非再処分であるということとなり、保護観察処分・少年院送致になった多くの対象者は更生していることを示しています。更生保護による一定の成果はあるのではないかと狩野さんは語ります。

対談パートでは、狩野さんの実際のご体験を様々に語っていただきました。
狩野さんは「なにかボランティアに取り組みたい・社会の役に立ちたい」という気持ちでボランティアを探していたところ偶然BBS会に出会い、関わり始めたのだといいます。ケース研究への参加、キャンプ・ハイキング・グループワークなどを通して対象者と関わる活動への参加などを続けられたあと、退任される保護司からのお声がけにより保護司としても活動することになりました。

狩野さんは保護司の仕事を「対象者への理解と想いがないとできない、名誉などではできない仕事」と語られました。保護司となって初めてのケースを振り返り、対象者家族をケアすることや社会で更生者を受け入れていく必要性を強く感じたといいます。少年犯罪のケースでは、となりにいる身近な存在でいてあげること、本人を取り巻く環境にいかに味方をつけられるか調整をすることの重要さを学ばれたそうです。

西﨑さんは保護司やBBS会について、「更生保護の分野でなくてはならない存在」と語られました。「どのように活動の魅力を伝え、さらに若い方に参画して頂くか?」ということは何十年もずっと考えているといいます。西﨑さんは「条件はあるものの、こういうことができないと保護司になれないというのは特段ない。皆様も保護司に挑戦されてみてはいかがでしょうか?」と受講生に向けて話され、狩野さんも「もっともっと私自身が広めていかないといけないなと思っている」とパワフルにお話しされました。



*『令和3年版 犯罪白書(法務総合研究所)』第5編による。 https://www.moj.go.jp/housouken/housouken03_00049.html

講師プロフィール

法務省 保護局総務課企画調整官 / 横浜西区BBS会会員 兼 保護司

西﨑勝則 / 狩野修

西﨑勝則
1970年、愛媛県出身。1993年、法務省松山保護観察所採用。
大阪、京都などの保護観察所において保護観察官として保護観察対象者の処遇を実施したほか、法務省保護局などで政策立案にも従事。現在は、保護局総務課にて企画調整官として勤務。
2007年に始まった更生保護における犯罪被害者等施策において被害者担当官となったのを機に、被害者支援をライフワークとし、被害当事者団体の行事のボランティアスタッフを務めている。

狩野修
1972年、群馬県出身。
1999年、市の広報誌でBBSを知ったことをきっかけに、当時在住していた大宮市(現さいたま市大宮区)のBBSに入会。
その後、2005年に大宮市(現さいたま市大宮区)で保護司の委嘱を受け、保護司活動を開始。
普段は電機メーカー営業職の会社員として勤務しており、転勤で全国を転々としながらも、BBS活動と保護司活動を継続。
現在は、大阪府吹田市でBBS会員兼保護司として、日々、保護観察対象者と向き合っている。
主な著書
「歌舞伎町で再犯防止について考えてみた」学文社(共著)