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2022
10/3

ケア原論7「女性と政治〜地方自治の視点から〜」

講師: 堂本暁子(元千葉県知事)
ケア原論の第7回では、「女性と政治〜地方自治の視点から〜」というテーマで堂本暁子さんをお迎えしました。

記者としてテレビ局に長く勤められたのち、国会議員、千葉県知事というキャリアを歩まれてこられた堂本さん。知事退任後も委員会設立や政策提言などの活動に取り組まれ、90歳を迎えられた今も精力的にご活躍されています。

記者の仕事をされていた当時から現在に至るまで、一貫して持ち続けられている軸があるといいます。それはジャーナリストとしての問題意識、すなわち徹底して市民の視点をもつということ。市民の視点からの報道に始まり、市民の視点からの国政・県政を貫き通されています。

堂本さんのその原点は番組「ベビーホテルキャンペーン」の制作でした。女性の社会進出が進んでいくにつれて広まった、認可なしで開くことのできる子供預かり業「ベビーホテル」。劣悪な保育環境に対する市民の声を1年に渡って伝え続け、これが1981年の児童福祉法改正の動きにもつながっていきました。

国会というフィールドではGLOBE(地球環境国際議員連盟)、国際人口開発会議、北京女性会議への参加など国際的な活動も広げられつつ、地球環境問題への取り組みや男女共同参画社会基本法、DV防止法、NPO法成立の働きかけをされました。党派を超えて女性国会議員たちが立法に活躍したといいます。

県政では「県民参加型の県政」を公約の一つとして掲げられ、ここでも市民の声を聞くということを貫かれました。当時約80あった市町村に、どういう形で県政をしてほしいか?どういう社会をつくりたいか?とひとつずつ回られて声を聞いていったのだそうです。

日本において、女性議員の割合は依然として少ない状態にあります。堂本さんはその点について「政治に限らず意思決定の場に女性がいないことは多く、それが問題である」と語られました。 意思決定の場に女性がいなかったことが課題となった一例は、東日本大震災の復興政策。避難所においては女性への配慮の欠如がみられ、暴力やセクシュアル・ハラスメントに悩まされた人も少なくありませんでした。また、妊産婦が刑務所で出産するとすぐに子どもを引き離されてしまう問題をどうにかしてほしい、という助産師さんからの訴えがあったという事例も。
意思決定の場に女性が増えるために必要なことは何か?という受講生からの質問に対しては、差別を根絶すること、女性が思い切って場に出て行くこと、女性も含めてリーダーになれる人材育成を行なっていくことであると答えられました。

また、国政に携わられていた当時から生物多様性の問題には長く取り組まれており、今もライフワークとして続けられているとお話されました。「里山・里海文化を守ること、人と自然が共生することが日本の文化であり、生物多様性を守ることにつながると思っている」と堂本さん。 市民の声に耳を傾けながらエネルギッシュにご活動され続ける姿に、多くの受講生がパワーを貰ったのではないでしょうか。

講師プロフィール

元千葉県知事

堂本暁子

1932年生まれ、東京都出身。東京女子大学文学部卒業。TBS報道局記者。『ベビーホテル・キャンペーン』で日本新聞協会賞ほか受賞。
1989年、参議院議員に当選。男女共同参画社会基本法、DV防止法、児童買春禁止法、NPO法などの制定に関与。GLOBE(地球環境国際議員連盟)の日本総裁、世界総裁、IUCN(世界自然保護連合)アジア地域理事ならびに副会長を歴任。1997年、UNEP(国連環境計画)の『環境に貢献した25人の女性リーダー』に選ばれる。
2001年から2期8年千葉県知事を務める。県民参加の県政を軸に、NPO立県、地方民主主義の確立を目指す。男女共同参画政策、障害者政策などに力を注いだ。
2011年3月11日の東日本大震災以後、災害・復興政策の関する提言活動を展開。
2012年6月、防災や災害復興に関する政策提言活動が評価され、男女共同参画社会づくり功労者内閣総理大臣表彰を受賞。2021年10月15日、「令和3年安全安心なまちづくり関係功労者表彰」を受賞。

現在 男女共同参画と災害・復興ネットワーク代表、
   生物多様性の10年国内委員会委員(環境省)
   再犯防止推進計画検討会委員(法務省)
   日本極地研究振興会評議員

主な著書
1995年 『生物多様性 生命の豊かさを育むもの』岩波書店
1995年 『立ち上がる地球市民-NGOと政治をつなぐ』河出書房
2021年 『声なき女性たちの訴え』小学館集英社プロダクション