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2022
7/25

ケア原論6「Care and Art, the journey to the heart of humanism ケアと芸術:ひとの根源への旅」

講師: Yves Gineste / 本田美和子(ジネスト-マレスコッティ研究所所長、富山県立大学客員教授 / 国立病院機構東京医療センター 総合内科医長・高齢者ケア研究室長 日本ユマニチュード学会代表理事)
今回は「知覚・感情・⾔語による包括的ケア技法:ユマニチュード」の発案者のひとりYves Gineste(イヴ・ジネスト)さん、⽇本ユマニチュード学会代表理事の本田美和子さんのお二人にお越しいただき、ケアとアート、ユマニチュードについてお話しいただきました。

「歴史的に振り返ると、すべての人間は生きていくために「宗教」「科学」「哲学」の3つのアプローチが重要であると私は考えます」というお話から講義はスタートしました。道徳と倫理を哲学したフランソワ・ラブレーの言葉のひとつに、「良心のない科学は魂の廃墟である」というものがあります。この言葉がユマニチュードの倫理、即ち「ケアの哲学がないとよいケアはできない」という倫理につながるとジネストさんはいいます。

ユマニチュードを生み出すきっかけとなったのは、職員の腰痛予防の指導者として病院に訪れたときに「ケアに困っている患者さんのケアを手伝ってください」と頼まれたという出来事。

それまでどう病院職員が呼びかけても反応がなかった患者さんが、ジネストさんが「すみませんが助けてくれませんか」と声をかけると目を開け、「僕の手をにぎってベッドに座ってくれませんか?」と声をかけると体を動かしてくれ、その患者さんの様子に病院の職員はびっくりしたのだそうです。ジネストさんは自身の経験から、今寝たきりになっている方の95%は正しいケアを行なっていれば寝たきりにならずに済んだはずだ、と話します。

そこでジネストさんはRosette Marescotti(ロゼット・マレスコッティ)さんとともに、どうしたら相手によいケアを受けてもらえるか、ケアにおいての技術の開発を病院で行いました。400を超える技術を作り出したのち生まれたのが、「見る、話す、触れる、立つ」というユマニチュードの4つの柱です。
この4つの柱は、第二の誕生の行為であるといいます。生物学的な第一の誕生とは違い、”人間として迎えられる”という社会学・動物行動学的な第二の誕生である、と。

またこの4つの柱は、「人をケアする人であるならば、人らしさに注目したケアを行わなければならない」という哲学に支えられています。
ジネストさんらがユマニチュードという哲学を考えるときに最初に考えたのは、「人とは何なのか?」ということだといいます。人間はお化粧をしたり、洋服を着たり、二本足で立って歩いたり、感情をのせた言葉を発したり、飲食をしたり、ユーモアをもったり、精神性や尊厳を持っています。こうした 「人らしさ」の周りには、さまざまな文化が取り巻いているのです。ユマニチュードは、これらの文化を尊重するケア、ともいえるかもしれません。

ジネストさんは最後に、詩、音楽、絵画といったアートもまた人間が生きていくために必要なものではないかという問いを投げかけられました。 なぜアートが重要なのか──。私たちが誰かと分かち合うことができるものであるから、と話されました。

講師プロフィール

ジネスト-マレスコッティ研究所所長、富山県立大学客員教授 / 国立病院機構東京医療センター 総合内科医長・高齢者ケア研究室長 日本ユマニチュード学会代表理事

Yves Gineste / 本田美和子

Yves Gineste
トゥールーズ大学卒業。体育学教育の経験を踏まえ、1979年にフランス国民教育・高等教育研究省から病院職員教育担当者として派遣され、病院職員の腰痛対策に取り組んだことを契機に、看護・介護の分野に関わることとなった。現場での経験をもとに知覚・感情・言語による包括的ケア技法:ユマニチュードを考案し、現在欧州・アジア・米国各地での教育活動を行なっている。

本田美和子
1993年筑波大学医学専門学群卒業。内科医。国立東京第二病院にて初期研修後、亀田総合病院等を経て米国トマス・ジェファソン大学内科、コーネル大学老年医学科でトレーニングを受けた後、国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センターを経て2011年より現職。2011年にフランスでユマニチュードを学び、臨床現場での実践・教育・研究を進めている。