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  • ケア原論
2022
6/13

ケア原論1「イントロダクション/病気のみつめかた/ ケアとは何か」

講師: 飯田大輔(社会福祉法人福祉楽団 理事長)
ケア原論の第1回では、「ケア」の歴史や性質、病気のみつめかた(疾病論)、ケアとは何か(目的論)などについて、専門的・職業的な意味合いとしての「看護」や「介護」に焦点をあてて飯田さんにお話しいただきました。

「介護」というのは当時の日本の社会事情から生み出された日本生まれの概念で、外国では「Nurse」と訳される、というところから講義は始まりました。

介護というものを理解するためには、人間一般(人間とはなんなのか)を理解することが必要だといいます。そのための視点として、介護やケアを科学としてきちんととらえることが必要ではないか、と飯田さんは主張されました。ただし介護・ケアにおける科学は経験のなかに潜む論理を法則化するという形をとるため、医療における科学と性格は異なります。介護・ケアにおけるエビデンスは医療におけるエビデンスとは違うということです。

次に、介護と看護はどのように関わり合っているのかということを考えていきました。

チームで介護や看護の実践を行うにあたり、目的や原理を理解していないとよいケアはできないといいます。目的や原理というものはそれぞれが重なりあっている部分に現れるものであるために、その重なり合いを見ていく必要があると方向づけられました。介護と看護における重なり合い、つまりその共通点は「生活を整える実践を行なっている」という点である、といいます。

「ケアとは何か」を考えるセクションでは、それを考える糸口としてナイチンゲール看護論をご紹介いただきました。

ルドルフ・ウィルヒョウ「細胞病理学(1858)」によると、病気とは「病変がある」という状態だといいます。つまり医学的な視点から病気を見ると、「病変を除去すれば病気は治る」という大前提のもとに医学的治療は成り立っているということとなります。

その一方、ナイチンゲール「看護覚書(1860)」によるケア的な視点から病気を見ると、すべての病気は「回復過程である」といいます。そしてその視点のもと、看護がするべきこととは「自然(身体のなかで自然に営まれている回復過程)が患者に働きかけるに最も良い状態に患者を置くこと」つまり「患者の生命力の消耗を最小にするように整えること」であるというケア論が展開されていきます。これはすなわち、体の構造がわかっていないとよいケア実践はできないということを意味します。生理学に基づいたケアの重要性を飯田さんは強く主張されていました。

講師プロフィール

社会福祉法人福祉楽団 理事長

飯田大輔

1978年千葉県生まれ。
東京農業大学農学部卒業。日本社会事業学校研究科修了。千葉大学看護学部中途退学。
千葉大学大学院人文社会科学研究科博士前期課程修了。(学術修士)

2001年、社会福祉法人福祉楽団を設立し、特別養護老人ホームの生活相談員、施設長などを経て、現在、理事長。

2012年、株式会社恋する豚研究所を設立、現在、代表取締役。
現在、千葉大学非常勤講師、京都大学こころの未来研究センター連携研究員、ナイチンゲール看護研究所研究員。
介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士。