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2022
12/5

ダイバーシティ実践論10「食とアートを通してつくる文化」

講師: 福島徹 / 日比野克彦(食品スーパーマーケット福島屋代表取締役会⻑、兼、株式会社ユナ イト代表取締役社⻑ / 東京藝術大学長)
ダイバーシティ実践論第10回では食品スーパーマーケット福島屋代表取締役会⻑の福島徹さんと日比野克彦学⻑にお越しいただき、「食とアートを通してつくる文化」というテーマで対談形式の講義を行いました。

福島屋は、手づくりによる商品を流通させているこだわり志向の食品スーパーマーケット。市場を介さないで、人と人とのコミュニケーションを積み重ねながら場や商品を作っていらっしゃいます。

福島さんが一貫して主張されていたのは、「食品業界には情緒が必要だ」ということです。どうやって売上をのばすか、どういった栄養がどんな効果をもたらすかなど、食品事業所はともすると食の機能的な一面ばかりに注目してしまうことも多いかもしれません。しかし福島さんは「なんかいいな」「なんとなくいいな」という感覚、シーン、歴史、人の表情、音などの文化や情緒が食品業界にはとても重要なのではないかといいます。「結果的に形ができて、ものができて、場ができて、機能がある。感覚的、情緒的なものを深掘りしてみたら、その場が、その食べ物が、その畑が、みんなにとって必要な大切な存在になると思っている」と語られました。

東京藝術大学でも、2020年にコロナ禍とともに始まった美術学部食堂の「藝大食樂部(げいだいくらぶ)」、2022年に新校舎の国際交流棟内で始まった音楽学部食堂のGEIDAI LIVINGなど、食に関する新しい取り組みが起こっています。

日比野学長から藝大食樂部のコンセプトや今後についてのお話も多くありました。
「食う」「LOVE」の捩りとして名付けられた藝大食樂部は、食べるという機能だけではなく、食を通して情緒を体感できるような場となることを目指しているのだといいます。
生産者とコミュニケーションをとり、 物語も含めて提供するという藝大ならではの食の届け方、食樂部活動をこれからしていけると面白い、とこれからの展望をお話されました。

アートと食が密接につながりうる所以とは何なのでしょうか。
この問いに対して、福島さんからは「身近にあるもの」というキーワードが出ていました。食は、我々が生きていくうえでなくてはならず、地域を考えるときにも必ずつながるという普遍性をもっています。日比野学長は表現の素材として段ボールを用いることが多くありますが、福島さんはその素材の身近さから食との親和性を感じていたのだそうです。

日比野学長からは「他者がいる上で、自分が生きている実感を感じる手段としてアート/表現をしているが、手段はアートだけなく食であったりと、色々なものであっていいと思う。そうすると食もアートになっていく」と、ツールとして見たつながりを語られていました。

講師プロフィール

食品スーパーマーケット福島屋代表取締役会⻑、兼、株式会社ユナ イト代表取締役社⻑ / 東京藝術大学長

福島徹 / 日比野克彦

福島徹
1975 年、家業のよろず屋を継ぎ、酒屋、コン ビニを経て、34 歳の時に現在の業態へ。その後、美味しさを求め、 東北の生産者から直接お米を仕入れるなど農業との距離を縮め、三 位一体による福島屋オリジナル商品を多く開発している。
2009 年幻冬社「食の理想と現実」
2014 年日本実業出版社「福島屋 毎日通いたくなるスーパーの秘密」 などを出版。
2011 年 NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」
2015 年テレビ東京「カンブリア宮殿」 その他数々のテレビに取り上げられる。

日比野克彦
1958年岐阜市生まれ。
1982年東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。卒業制作で第一回デザイン賞受賞。1984年同大学院美術研究科修了。在学時にはサッカー部に所属。
1982年第3回日本グラフィック展大賞、1983年第30回ADC賞最高賞、1986年シドニー・ビエンナーレ、1995年ヴェネチア・ビエンナーレ出品。1999年毎日デザイン賞グランプリ、2015年文化庁芸術選奨芸術振興部門 文部科学大臣賞 受賞。
1995年に美術学部デザイン科助教授に就任。1999年美術学部先端芸術表現科の立ち上げに参加し、助教授として就任。2007年教授。2016年から美術学部長。2022年4月1日、学長に就任。