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2022
6/6

ダイバーシティ実践論6「覚醒剤や違法/合法薬物~クスリは生き方?」

講師: 匿名(元薬物依存症当事者)
第6回では、過去に合法ドラッグ(現危険ドラッグ)依存症・薬物依存症を経験し、今もプログラムを行いながら後遺症とともに生きていらっしゃる方にお越しいただき、薬物の基礎知識・薬物依存症となった経緯や現在の状況・薬物依存症となった際の国内外の体制などについてお話しいただきました。

 お話しいただいた方は学生時代に合法ドラッグ(現危険ドラッグ)の服用から始まり、リタリン、MDMA、覚醒剤、コカイン…と薬物使用が進み、入院や覚醒剤取締法違反による逮捕を経験。その後就職したものの再度覚醒剤を購入してしまい、2度目の逮捕も経験されたそうです。

その中では薬物の効果によって学業がとても捗る経験をされた一方、入院病棟で「覚醒剤使用者は何をするか分からないから」というスティグマ(負の烙印)を突きつけられたり、「歩いている大人が全員私服警察官に見える」「自首した方が刑が軽くなるぞと聞こえる」などの幻視・幻聴に苦しまされたりなど、薬物依存症によってご自身に起こった体験を赤裸々にお話しくださいました。

「薬物犯罪は被害者がいないというけれど、そんなことはない」といいます。自身の依存症によって家族が体調を崩してしまったことを目の当たりにしたこともあったそうです。

 依存症をどう断つかというお話しでは「意志の力で辞めるのは困難」というお話しもありつつ、「結局は意志がないと依存症からは回復しない、「意志」で薬物を断つためのプログラムを続けている」といいます。

 また、違法薬物の使用が疑われる患者が病院に来た際、患者の了承なしで尿検査を行い、警察に提出することは「正当行為」であるという判例があったといいます(2005年)。しかしこういった体制をとると通報を恐れて病院に行けなくなるのではないか、薬物依存は病気的な面が強いために医療につながるようにしていかなければならないのではないかと主張されました。

 最後には、薬物依存症は誰でもなる可能性があるが回復すること、薬物で逮捕されるとスティグマを押されてしまうこと、回復した薬物依存者は世間に貢献することができるため、一人の人間として認めてほしいこと、幻聴に一生悩まされる人もいるので使用は辞めてほしいこと ── 当事者であるからこその力強いメッセージとともに講義を締めくくられました。



講師プロフィール

元薬物依存症当事者

匿名

某指定都市生まれ
有名私立大学卒業。有名私立大学大学院中退
中退後、フリーター生活
2000年代中盤、覚醒剤取締法違反で逮捕
懲役1年半執行猶予3年
会社員になる
2010年代中盤、覚醒剤取締法違反で逮捕
懲役2年執行猶予4年
現在は薬物撲滅活動をしている。