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2022
5/23

ダイバーシティ実践論4「異彩を放て〜福祉×アートの可能性〜」

講師: 松田 崇弥(株式会社ヘラルボニー 代表取締役社長 CEO)
第4回では、「異彩を、放て。」というミッションを掲げ、ファッション・インテリア・アートライセンスなどの事業を広げる株式会社ヘラルボニーの代表取締役社長 松田 崇弥さんにお越しいただきました。

ヘラルボニーでは、日本全国の福祉施設でアート活動をされている主に知的障害がある作家さんとライセンスの契約を行い、様々な企業と仕事をしたり自社でブランドの展開を行っています。

障害のある人は世界に10億人以上、日本では936万人という数にのぼり、そのうち知的障害がある人は109万人といわれています。松田さんのお兄様も重度の知的障害と共に生きていらっしゃるお一人です。

お兄様とは家の中では家族として至って普通に仲良く過ごしているのに、一歩社会という外に出ると「障害者」という枠組みに入れられてしまう。それによって勝手に「かわいそう」という枠に入れられたり、バカにされたりする。そのような状況に違和感を感じ、「イメージを変える」ということへの関心から株式会社ヘラルボニーを立ち上げられたそうです。

松田さんは「(作家に対して)尊敬が生まれるアウトプットをしたい」という想いから、展開する事業では「素敵な作品を素敵なままに届けていく」ことを大事にしているといいます。

この想いは、松田さん自身のご経験から生まれたものだといいます。松田さんの中学時代、自閉症スペクトラムをもじった「スペ」という言葉がクラス内で流行し、バカにする風潮があったといいます。「兄のことを嫌いになってたわけではなかったけれど、自分にも障害を抱えた兄がいるって言えなくなってしまっていた。そういう選択をしてしまった自分に対するやるせなさがあったので、そういうことが起きないようにしたい。尊敬みたいなものを作れたら。」と語られました。ライセンス契約を行っている作家さんの作品が評価されたことで、本人の幸福だけでなく、地域や周囲の人々からの尊敬が生まれることに繋がったそうです。

自社のことを「障害者支援団体」と明記されそうになり、幾度となく赤字を入れてきたといいます。障害のある人は即ちビジネスパートナーであり、障害のある人を「支えている」・障害のある人に「依存されている」のではなく、自分達はむしろ障害のある人に「支えられている」「依存している」とお話されました。

講義の最後には、”障害者”という言葉に対する問題意識を共有してくださいました。2020年の「桜を見る会」招待者名簿のシュレッダー廃棄問題では「障害者」という言葉が欠落を示唆しうる言葉のように使われたこと、「障害者」という言葉を口にするときに言いづらそうにする人を多々目の当たりにすることがあることなどから、「”障害者”という言葉でいいのか?」という問いを持っているとお話しされ、括り方としてアップデートすべきなのではないかと主張されました。

 

講師プロフィール

株式会社ヘラルボニー 代表取締役社長 CEO

松田 崇弥

代表取締役社長。小山薫堂率いる企画会社オレンジ・アンド・パートナーズ、プランナーを経て独立。2018年、「異彩を、放て。」をミッションに掲げる福祉実験ユニット「ヘラルボニー」を双子で設立。岩手と東京の2拠点を軸に福祉領域のアップデートに挑む。日本を変える30歳未満の30人「Forbes 30 UNDER 30 JAPAN」受賞。