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2018
10/1

アーティストの活動1「死ななきゃなんでもいい」

講師: 坂口恭平(作家)
後期の第一回目のダイバーシティ実践論の講師は坂口恭平さん。ギターを片手に登場です。
坂口さんには「いのっちの電話」を中心にお話し頂きました。坂口さんが死にたい、と思う人からの連絡を受ける「いのっちの電話」。「いのちの電話」を手伝おうと思ったのがきっかけです。電話番号は坂口さんの携帯電話。WikipediaやテレビCMで公開しています。1日だいたい5人、1人につき30分くらい話すそう。2012年から初めて今年で7年目、延べ一万人以上の話を聞いているそうです。
 
坂口さん自身、境界線が殆どない瞬間がある、月1回悪魔が身体の中に入り死にたくなる、といいます。でも今この瞬間は、死にたくなることが分からない。それは躁鬱病である、と坂口さん。
 
「境界が揺らいでいる・自分なんて無いと思っていること、それが鬱。”健常な”世界=言葉のコミュニケーション。言葉以外のコミュニケーションが分かる時期がある。周期的にこの世界のことが分かる。その時落ち込む。落ち込んでいる時間は大事。そういう人は誰にも相談しない。家族にも言えない。ヤバかったら電話(「いのっち電話」に)です。」
「鬱の一発は大人のたしなみですから。人生の早めに迷っておく。自分の問題点を回避すると鬱にならない。自分の問題と向き合うと鬱になるが、その人たちのための場所が無い。(坂口)」そのための居場所を、坂口さんは建築しているのです。
 
「坂口さんが辛いときに電話がかかってきたらどうするのですか?」という受講生からの質問に、
「電話をとることはとるが、あなたよりも多分僕の方が今辛いと思う、というと、すみませんでした、かけ直します、と言われる。」
「(自分は)素直さを武器としてる、孫子のように。防具が無い、逃げるしかない。感受性の動体視力が強い。これは最強の強さ。本気の少数民族。子どももそう。
健康な人が健康でない人をケアするのというシステムはもう難しい。隣近所の繋がりも無い。あらたな関係性を建築している。」と坂口さん。

自身の訳詞によるアントニオ・カルロス・ジョビンの「三月の水」の歌と演奏のあと、「というわけで質問があれば(いのっちの)電話で。死なないようにしてください。」と講義を締めくくりました。

 

 

 

 

 

講師プロフィール

作家

坂口恭平

坂口 恭平(さかぐち きょうへい)
1978年熊本県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
日本の路上生活者の住居を収めた『0円ハウス』を2004年に刊行。
その後『TOKYO 0円ハウス 0円生活』『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』を発表し、
都市の幸をもちに生きる術を示す。
東日本大震災後の2011年5月、熊本で独立国家の樹立を宣言し、新政府総理大臣に就任。
その経緯と思想を綴った『独立国家のつくりかた』が話題となった。
その後、小説を書きはじめ『幻年時代』『徘徊タクシー』など著書多数。
文筆のほか、音楽、美術の分野でも多彩な活動を行う。