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2018
6/4

当事者との対話7「(鼎談)弁護士×性風俗店経営者×現役風俗嬢 "風テラス"の取り組みから考える」

講師: 浦崎 寛泰(弁護士・社会福祉士・弁護士法人ソーシャルワーカーズ代表)/篠原 政見(株式会社U.D.B代表取締役・鶯谷デッドボール創業者)/アボット(鶯谷デッドボール所属[広報部長])
「風テラス」はカゼテラスではなく、フウテラスと読みます。
風は風俗の「風」、風俗で働く女性たちのための無料の生活や法律の相談会です。
性風俗店と協力し、待機部屋で無料相談会を実施しています。相談内容は、借金や相続など一般の弁護士が受けるものとほとんど変わらないそうです。

この日登壇したのは、弁護士の浦崎さんのほか、風俗店「鶯谷デットボール」創業者の篠原さんと、そこで働くアボットさん。鶯谷デットボールは、風テラスが無料相談会を実施しているお店の一つで、アボットさんは実際にそこで相談した当事者です。
お店が直接介入しないで相談できる手段として、風テラスが良いと思った、と篠原さん。
障害や個人の特性として、毎日規則正しく、決まった時間に職場に行くことが難しい人がいる。社会復帰の第一段階として、働きたいときに働いてもらえれば良い、と語りました。

アボットさんは通常の働き方が難しく、借金もあったため、風テラスに自己破産したいと相談しました。篠原さんにも協力してもらい、生活保護を受け、知的障害者手帳も取得したそうですが、現在は収入もあるため、生活保護をやめ、借金も返済しました。
行政に相談に行くと、なんでそんなところで働いているのかと、第一声で否定されると言います。世間体が悪い、せっかく手帳を取ったのに、なぜ風俗で働くのかと言われることが多いそうです。
生活保護を受けた方が楽なのではないか、という質問に対し、アボットさんは、「楽をしてお金を得るのはいやだ。どんな仕事でも仕事は仕事。自分の力でやっていきたい。」と語りました。

セックスワーカーも多様になり、若い女性ばかりではなく、高齢者や男性、副業的に関わっている人もいます。悩みも多様な分、支援も多様でなければならないと浦崎さんは語ります。身近な人に相談できないデリケートな問題は、少し距離の離れた専門家の存在が心強いと感じました。

講師プロフィール

弁護士・社会福祉士・弁護士法人ソーシャルワーカーズ代表

浦崎 寛泰

浦﨑 寛泰(うらざき ひろやす)
長崎県の離島(法テラス壱岐)で活動した経験や、法テラス千葉で障害のある方の刑事弁護を数多く担当した経験から、弁護士とソーシャルワーカー(福祉の専門職)が、分野や地域を越えて、普遍的に協働することができる仕組みが必要と考えている。
個人の刑事事件から一般民事事件まで幅広く取り組んでいるが、最近は、障害のある方の成年後見業務、性風俗で働くセックスワーカーの法的支援に力を入れている。
2015年、性風俗で働く人のための無料生活・法律相談「風テラス」の立ち上げに加わる。
2018年4月、弁護士法人ソーシャルワーカーズ設立。

株式会社U.D.B代表取締役・鶯谷デッドボール創業者

篠原 政見

篠原 政見(しのはら せいけん)
株式会社U.D.B代表取締役。鶯谷デッドボール創業者。
2009年、東京鶯谷にて「レベルの低さ日本一」を謳い文句にした性風俗店「鶯谷デッドボール」を開業。
通常の性風俗店では不採用になる女性を集めた「地雷専門店」としてメディアの話題をさらい、現在は鶯谷・西川口・池袋・五反田の4店舗を展開。
2014年末、同店で働く貧困女性を追ったドキュメンタリー「刹那を生きる女たち 最後のセーフティーネット」が、第23回FNSドキュメンタリー大賞を受賞。
共著に『なぜ「地雷専門店」は成功したのか? 業界未経験の経営者が超人気風俗店を作り上げるまで』(2014年・東邦出版)がある。

鶯谷デッドボール所属[広報部長]

アボット