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2021
10/18

ケア原論8「近代社会における贈与・利他・ケアの必然性」

講師: 近内 悠太(教育者・哲学研究者)
 今回の講義では、教育者・哲学研究者であり『世界は贈与でできている』の著者である近内悠太さんに、贈与に関連する利他およびケアについてお話を伺いました。

 人間は、自身の身に起きた不条理な出来事に対して、意味を持つことで納得するという神義論的な考え方や、テクノロジーや医療衛生・化学・認識などの進歩に合わせて常に身の回りの物事の意味を獲得し続けていくという特徴を持ち合わせていると近内さんは語られます。

 「贈与や利他、そしてケアという概念は、人間にとって必要不可欠な生活のインフラのようなものなのだ」と仰った近内さん。近代社会ではいわゆる神議論が機能せず、不条理な出来事が起きたときに頼るものがない中で社会の変化に取り残される人々も多く、それらの人々へのアプローチとして贈与やケアの必然性があると主張されました。

 また、コロナ禍で気づいたのは「無駄がないと生きている心地がしない」ことだと仰っており、講義の終盤では、一見無駄に見える文化の必要性についてもお話しされています。差出人の意図によらず、受け取り側が強く受け取ったと感じたものが贈与、利他は差出人の視点にあるものであると整理した上で、自分が関わっている身近な共同体からお互いケアし合う、人間らしいやりとりの重要性について考える時間となりました。

講師プロフィール

教育者・哲学研究者

近内 悠太

1985年神奈川県生まれ。教育者。哲学研究者。
慶應義塾大学理工学部数理科学科卒業、日本大学大学院文学研究科修士課程修了。
専門はウィトゲンシュタイン哲学。リベラルアーツを主軸にした統合型学習塾「知窓学舎」講師。
『世界は贈与でできている』(NewsPicksパブリッシング刊)で第29回山本七平賞・奨励賞を受賞。