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2021
10/4

ケア原論7「『ひとりにしない』という支援」

講師: 奥田 知志(NPO法人抱樸 理事長)
 今回の講義では、ホームレス支援NPO法撲の理事を務められている奥田知志さんに日本の社会保障の現状や社会的孤立の問題などについてお話を伺う中で、課題解決型の支援だけではなく「つながり続けること」自体を目的とした伴走型支援について考えました。

 これまで日本の社会保証は、現金給付と現物給付を中心に行われてきており、つながりやケアは、家族・地域・社会が担ってきました。しかし、家族・地域・社会が複雑化する現在、社会保障が機能せず、人々が社会的孤立に追い込まれています。

日本において、孤独や孤立は身近にある問題で、「孤独を感じる」と答えた子どもは他の国に比べ圧倒的に高く、家族以外の人と交流がない人や、60才以上で同居人以外に頼れる人がいない人の割合も高い状況です。
また、経済的困窮が社会的孤立を招き、経済的孤立(ハウスレス)、社会的孤立(ホームレス)が重なることで、路上生活へたどり着いてしまう現状を知りました。
そのような問題に立ち向かうべく、奥田さんは約20年にわたり、つながり続けることを目的とした伴走型支援を行っています。

 奥田さんが、伴走型支援を行うことになったきっかけは、2005年に17歳の少年が起こした事件の関連記事を読んだことでした。子どもに対する悩みを抱える親が綴った「動いてくださる先生は一人もいらっしゃらなかった」という記事内の言葉を読み、一緒に動いてくれる人の必要性を感じ、「問題解決はできないかもしれないけれども一人にはしない」と決意をしたと言います。

 抱樸のケアの中心的な考えには、家族の社会化があります。”可哀想な人を助けるだけでは支援にならない”と仰った奥田さん。みんなそれぞれが役割を担っていくことが目指すべき形であり、家族に含まれる自己有用感、相互性、何気ない日常などに注目しています。

講師プロフィール

NPO法人抱樸 理事長

奥田 知志

NPO法人 抱樸(旧北九州ホームレス支援機構)理事長 
日本バプテスト連盟 東八幡キリスト教会牧師
NPO法人ホームレス支援全国ネットワーク理事長
公益財団法人共生地域創造財団代表理事
一般社団法人生活困窮者自立支援全国ネットワーク代表理事
一般社団法人全国居住支援法人協議会 共同代表

1963年滋賀県生まれ。
1990年東八幡キリスト教会牧師として赴任、同時に、学生時代から始めた「ホームレス支援」を、ボランティアとしてだけでなく、教会の課題として継続し、北九州市において、3,400人以上のホームレスの人々を自立に導いたNPO法人抱樸(旧北九州ホームレス支援機構)の理事長としての重責を担う。
第19回糸賀一雄記念賞受賞など多数の表彰を受ける。
NHKのドキュメンタリー番組「プロフェッショナル仕事の流儀」にも2度取り上げられ、広範囲に活動を広げている。

著作に、「いつか笑える日が来る」(いのちのことば社)、「助けてと言える国へ」(茂木健一郎氏共著・集英社新書)、「生活困窮者への伴走型支援」(明石書店)等。