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2021
12/20

ダイバーシティ実践論12「ヨコハマ・パラトリエンナーレとレガシー」

講師: 栗栖 良依(認定NPO法人スローレーベル 理事長/プロデューサー)
 今回は、栗栖 良依さんに、ヨコハマ・パラトリエンナーレや日本初のソーシャルサーカスカンパニーが誕生した背景を伺う中で、障がいの有無を超え誰もが舞台に上がれる仕組みづくりについて考えました。

 栗栖さんが障がいや福祉について深く考えることになったきっかけは、2010年、骨肉腫による右下肢機能全廃の障がいの当事者、そして癌サバイバーとなったことでした。その翌年、アーティストと障害者福祉施設コラボ型ものづくり「横浜ランデヴープロジェクト」のディレクターに就任し、SLOW LABELを立ち上げたのち、ヨコハマ・パラトリエンナーレの総合ディレクターに就任し、障がい者の創作活動におけるアクセシビリティ改善に取り組みました。

 ヨコハマ・パラトリエンナーレ設立にあたって、一流の「伴奏者」(アカンパニスト)を育てることをビジョンの一つとして掲げたと栗栖さんは語ります。障がいがある方が創作する際、そのプロセスの中で施設職員などの力を借りてクリエイティブな創作物になることが多いことから、障がい者の創作活動をサポートする「伴奏者」にスポットをあてていくことを考えたそうです。

ヨコハマ・パラトリエンナーレを行う上で、障がいがあるダンサーのケアをする医療従事者が見つからないなど、障がい者と健常者が出会う機会や協働する機会がないという課題に直面しました。その経験をもとに、2015年に表現者として舞台に立ちたいと願う誰もが障がいを理由に諦めなくて済む環境をつくるために「SLOW MOVEMENT」を立ち上げました。SLOW MOVEMENTでは、アクセスコーディネーターやアカンパニストなど、心理的に安全な環境をつくるスペシャリストによって参加者全員がフラットにコミュニケーションをとりながら、安全に一つの目標に向かう環境を生み出しています。

2019年には国内のダイバーシティ推進と調和のとれた世界の実現への貢献をめざし、シルク・ドゥ・ソレイユのサポートを受けながら日本初のソーシャルサーカスカンパニー「SLOW CIRCUS PROJECT」を設立しました。それぞれの強みや個性を生かすスキルを身に付けるエクササイズを体験することで、ソーシャルサーカスを利用したエンパワメントやコミュニティビルディングを行うプログラムです。

現在も、認定NPO法人スローレーベルの理事長兼プロデューサーとして「日常における非日常」をテーマに、多様性と調和のある世界を目指して、国内外のアート・デザイン・エンタメの世界を横断する自由な作風で、様々な分野の専門家や国と地域を繋ぐ、大規模なプロジェクト型の創作活動を推進されています。

 

講師プロフィール

認定NPO法人スローレーベル 理事長/プロデューサー

栗栖 良依

「日常における非日常」をテーマに、国内外のアート・デザイン・エンタメの世界を横断する自由な作風で、様々な分野の専門家や国と地域を繋ぐ、大規模なプロジェクト型の創作活動を得意とする。

2008年より、市民や行政などを巻き込みながら作り上げるソーシャルエンターテイメント作品をつくり始める。
10年、骨肉腫による右下肢機能全廃の障害者/癌サバイバーとなる。翌年、象の鼻テラス(スパイラル/株式会社ワコールアートセンター)によるアーティストと障害者施設のコラボ型ものづくり「横浜ランデヴープロジェクト」のディレクターに就任し、SLOW LABELを立ち上げる。
14年、ヨコハマ・パラトリエンナーレの総合ディレクターを務めながら、障害者の創作活動におけるアクセシビリティ改善に取り組む。
19年、シルク・ドゥ・ソレイユのサポートを受けながら日本初のソーシャルサーカスカンパニーSLOW CIRCUS PROJECTを設立し、国内のダイバーシティ推進と調和のとれた世界の実現への貢献をめざす。
2016年リオパラリンピック閉会式・旗引継式 ステージアドバイザー、東京2020パラリンピック開閉会式ステージアドバイザー。