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  • ダイバーシティ実践論
2021
11/15

ダイバーシティ実践論7「協働から生まれる風景 〜多様な人々をつなげるアート〜」

講師: 五十嵐 靖晃(アーティスト)
今回の講義では、人々との協働を通じてその土地の暮らしと自然とを美しく接続させ、景色をつくり変えるような表現活動を各地で展開している、アーティストの五十嵐靖晃さんにこれまでの活動についてお話を伺いました。

五十嵐さんのアーティスト活動の根底にある、“海からの視座”という海からこの世界を捉える視点は、2005年にヨットで日本からミクロネシアまで約4000㎞を航海した経験から生まれました。約4ヶ月間水平線しかない世界を旅する中で、風もない場所で何日も漂い、海からこの世界を捉えることで、ある種新鮮に世界を捉えられる感覚を得たそうです。

その後、五十嵐さんは漁師らと共に漁網を空に向かって編み上げ土地の風景をつかまえる「そらあみ」をはじめとする、様々なアートプロジェクトを各地で実施されています。 「そらあみのプロジェクトの中で漁師の方に言われた”芸術家というのはその土地の声に耳を傾ける人のことを言うんやな”という言葉に胸を打たれた」と語った五十嵐さん。

新しい土地に入り込み、多様な人と協働する中で、新しい眼差しを得て感覚が開いていくような時間を大切にしています。

講師プロフィール

アーティスト

五十嵐 靖晃

1978年千葉県生まれ。
東京藝術大学大学院修士課程修了。
人々との協働を通じて、その土地の暮らしと自然とを美しく接続させ、景色をつくり変えるような表現活動を各地で展開。アートとは「自然と人間の関わりの術」であると考える。2005年にヨットで日本からミクロネシアまで約4000㎞を航海した経験から“海からの視座”を活動の根底とする。

代表的なプロジェクトとして、樟の杜を舞台に千年続くアートプロジェクトを目指す福岡県太宰府天満宮での「くすかき」(2010~)、漁師らと共に漁網を空に向かって編み上げ土地の風景をつかまえる「そらあみ」(瀬戸内国際芸術祭2013・2016・2019)、山間に暮らす人々と協働し湖と雲を組紐で結ぶ「雲結い」(北アルプス国際芸術2017)、子午線すなわち世界の時間が一点に集まる南極で、子午線を糸に見立て世界各地から集った人々と組紐を組み、その紐を使って皆で凧揚げをするプロジェクト「時を束ねる」(南極ビエンナーレ2017)などがある。

東京2020オリンピック・パラリンピック公認文化オリンピアードTURNプロジェクトメンバーとして「TURNフェス」(東京都美術館/2016-2021)、「TURN in BRAZIL」(ブラジル/2016)、「TURN in BIENALSUR」(ペルー/2017)に参加。国内外の障害者施設との交流を通じて、福祉施設を文化施設に変える試みにも取り組んでいる。