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2021
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ケア実践場面分析演習 各チーム制作 実習先:千葉市児童相談所

講師: 金野千恵(建築家/teco)
<実習先の概要>

児童相談所とは、子どもに関する総合相談窓口で、18歳未満の子どもに関することであれば、どんなことでも誰でも相談可能。その他、里親の登録に関する手続きなども行っている。「一時保護所」は虐待の疑いがある子どもを緊急的に保護する施設。

<作品のタイトル>

小さな悩み、はじめました。

<作品について(概要・誰に伝えたいかなど)>

本作品は、誰に話すわけでもないような小さな悩みと、誰に見せるわけでもないスマホに入っている意味のない写真を知人や友人から集めてまとめた本である。

「予兆が小さい内に話してくれるとコトが大きくならずにすむ。」

私たちの実習先である児童相談所職員は実体験を交え、そう話してくれた。ただ、児童相談所が児童に関する様々な問題について相談に応じていると間口を開いていても、私たちは児相に悩みを相談しづらいと感じた。本当に小さな事でも相談して良いのだろうか、取るに足らない悩みを言ってもしょうがないのではないか、と考え躊躇してしまう。

令和元年度中に全国215か所の児童相談所が児童虐待相談として対応した件数は193,780件にもおよび過去最多となっている(厚生労働省より)。こうしたケースの中には、子どもの命が奪われてしまうものも含まれている。

もしかすると子どもの命を奪ってしまうような大きな問題になるもっと前は、解決できるかもしれない悩みごとだったはずで、さらにその悩みごとになるもっと前は、誰にでも話せる小さな悩みだったのかもしれない。

児相職員の言葉のように、小さな悩みも大きな悩みも同じくらい重要性をもち、それらを発信することに意味があるのではないか。小さな悩みを発信しやすい世の中になれば、みんな生きやすくなるのではないか。

そこで私たちは小さな悩みを集めて本にした。小さな悩みに日の目を浴びさせ、皆に発信してもらいたい。私だけじゃないと安心してもらいたい。この本を手に取ってもらい、その人自身が誰かに小さな悩みを話せるような、キッカケとなる本。

そして、誰しもが抱える小さな悩みは住んでいる地域や宗教など飛び越える、いわば共通言語のようなものだから、メンバーの身近な翻訳者達に依頼をして日本語以外のいくつかの言語を載せた。世界のどこかの誰かが、この本をキッカケに、少しでも生きやすくなってくれればと願う。

また、悩みに添えたのはスマホに残っている誰に見せるわけでもない写真。その使い道のない、発信しようもない写真と悩みを掛け合わせ、全く関係のない「悩み」と「写真」を並列に並べた。そうすることで、不思議と他人の小さい悩みがより親しみやすく感じられてくるのは、写真が自分のいる世界と同じ空気を吹き込んでくれるからなのかもしれない。

(文責:千葉市児童相談所チーム)

講師プロフィール

建築家/teco

金野千恵

1981 年神奈川県生まれ。2011 年東京工業大学大学院博士課程修了、博士(工学)。2013-16 年 日本工業大学助教。2015 年より t e c o を共同で設立。現在、東京大学、東京藝術大学などにて 非常勤講師。住宅や福祉施設の設計、まちづくり、アートインスタレーションを手がけるなかで、仕 組みや制度を横断する空間づくりを試みている。主な作品に住宅「向陽ロッジアハウス」、訪問介 護事業所「地域ケアよしかわ」(2014)、「幼・老・食の堂」など。
http://te-co.jp