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2021
7/12

ケア原論6「『分かち合い』としてのケア 〜コロナ危機から考える〜」

講師: 神野 直彦(東京大学名誉教授)
 今回の講義では、神野直彦さんから経済学の視点や歴史的背景とを絡めた社会福祉についてお話を伺う中で、アートとケアの本質やそれらと人間の存在欲求との結びつきについて考えました。

 現在、東京大学名誉教授や、税制調査会会長代理、社会保障審議会年金部会部会長を務める神野さん。現在の社会の問題として、私たちが所有欲求の赴くまま、ひたすら豊かさを追い求めてきた結果、自然環境と人的環境という生命の破壊ともいうべき根源的な「危機」に苦悩していると仰いました。また、パンデミックがそのような「危機」を増幅させているという問題について主張されました。

 かつて人間は、共同体内で労働能力のない子どもや高齢者を扶養するという世代間連帯によって命の絆を結んできました。しかし、現在は世代間連帯が社会化され、年金制度をはじめとする各種社会保障制度として存在しています。

 神野さんは、このような社会保障制度の成り立ちを踏まえた上で、現代を生きる人間の使命は、所有欲求ではなく、人間的な欲求である存在欲求を充足し、幸福を追求する人間的社会を目指すことにあると仰いました。

講師プロフィール

東京大学名誉教授

神野 直彦

1946年埼玉県生まれ。
大阪市立大学経済学部助教授、東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授、関西学院大学人間福祉学部教授、地方財政審議会会長などを経て、現在東京大学名誉教授、税制調査会会長代理、社会保障審議会年金部会部会長