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2021
6/7

ケア原論1「介護・看護の生成過程/疾病論から目的論へ/ケアとは何か」

講師: 飯田 大輔(社会福祉法人福祉楽団 理事長)
今回は、飯田大輔さんと一緒に「介護とは何か、看護とは何か」について考えました。

 まずは、科目名にもある"ケア"という言葉についてです。ケアという言葉には、気遣いや世話をするという意味の他に、専門的・職業的な意味合いでの看護や介護も含まれています。また、看護と介護は、どちらも英語では"Nursing"と表現されます。飯田さんは、国家資格としての看護師と、行為としての看護は分けて考えるべきであり、また看護や介護というケア、そしてその原理であるNursingとは何なのかをきちんと捉えていく必要があると言います。

 次に、近代看護を確立したフローレンス・ナイチンゲールによるナイチンゲール看護論の失病論に焦点を当てながら話は進みます。医学の視点では、病気は発見・特定し、外科的や内科的手法を用いて取り除くものですが、ケアの視点では、病気は回復過程と捉えます。この視点を持つ時、そこに自ずから「ケア(Nursing)とは何か」が見えてくると言います。

 ケアですべきことは、人体が内包する生命力が適切に働く状態に患者を置くこと、患者の生命力の消耗を最小にするよう生活を整えることであり、解剖学や生理学の知識がなければこれらの適切な判断は導き出されていきません。ここで、飯田さんから介護に関する事例が示され、一般的にどのような介護が必要かを考えました。飯田さんの問いと受講者との応答の中で、ケアだと思っていることが知識としては正しくとも状況に即さなかったり、思いやりや優しさだけでは自己本位に陥りかねなかったりすることに気づかされました。

 飯田さんは、「介護は日常生活にあまりにも密着しているため、”ただなんとなく”世話をしているだけでも、それが介護になっているという錯覚を持ちやすい。注意する必要がある。」と言います。真実の親切や思いやりとは、情緒的判断によるものではなく、良い介護を実現する、つまり、生命力の消耗を最小限にすることにあるのです。 また、介護は必ずチームによって展開されることから、共通の目的や判断基準を持つことが実践する上で大切であることを強調されました。

講師プロフィール

社会福祉法人福祉楽団 理事長

飯田 大輔

1978年千葉県生まれ。
東京農業大学農学部卒業。日本社会事業学校研究科修了。千葉大学看護学部中途退学。
千葉大学大学院人文社会科学研究科博士前期課程修了。(学術修士)

2001年、社会福祉法人福祉楽団を設立し、特別養護老人ホームの生活相談員、施設長などを経て、現在、理事長。

2012年、株式会社恋する豚研究所を設立、現在、代表取締役。
現在、千葉大学非常勤講師、京都大学こころの未来研究センター連携研究員、ナイチンゲール看護研究所研究員。
介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士。