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2025
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ケア実践場面分析演習 企画【アートを介して防災意識を生活に溶け込ませる】

講師: 渡邉五大(東京藝術大学大学院美術研究科美術教育研究室教授)
<チーム名(テーマ)>
このゆれ(高齢者)

<見つけた地域の課題>
谷中地域は狭い道路や行き止まりが多く、新耐震基準導入前に建設された木造建築が地区の44%を占める。また地域には坂が多く、高齢者の中には移動や地域活動にハードルを感じる方もおり、高齢者フレイルが懸念される。高齢者の防災意識や行動の活性化、そして近隣とのコミュニケーションが課題である。

<企画・制作までの道のり>
谷中地域でのフィールドワークを通じて、実際に目にした細かい路地の多さ、それに比例するかのような消火器の数、さらに地域包括支援センターやお寺の声を聞く中で課題を明確化した。長明寺でのヒアリングでは、寺院と地域住民の交流が希薄であることがわかり、防災時における地域協力の重要性が浮き彫りになった。また、地域包括支援センターでのヒアリングから、高齢者が移動や活動を始めることへのハードルの高さ、芸術への接触機会の少なさが課題として判明した。これらを踏まえ、アートを介して防災意識を向上させるとともに、地域交流を促進するための企画を検討。具体的には「モーニングミュージアム」「消火器BOXアート」「防災・火災編お話し会」「消火器マップ作製」など、日常に溶け込みやすい活動を企画した。

<企画名>
アートを介して防災意識を生活に溶け込ませる

<企画概要>
モーニングミュージアム: 高齢者向けに早朝に美術館を開館し、作品鑑賞後、身体表現による動き表現し、振り返りを行う。 消火器BOXアート: 地域設置の消火器BOXにアートを施し、設置場所の認知向上と住民の意識啓発を図ると共にコミュニケーションの場を創出する。 原寸大(サイズ:60×23×16、素材:発砲スチロール)1点 ハーフサイズ(サイズ:30×10×8、素材:段ボール)4点 防災・火災編お話し会: 谷中地域の地図を用いた危険箇所の共有、避難経路の意見交換を通じて、気づきを分かち合い、コミュニケーションの場として高齢者と地域の接点を作る。 消火器マップ作製:町会設置の消火器を中心に谷中地域の地図に、住民自身で自宅の近くの消火器の場所にマークを付けてもらい、日頃より街中に設置されている消火器の存在を通して防災意識を高める。 A2サイズの地域地図にシールを貼ったもの 2点

<全体を通してのチームの感想>
半年間のプロジェクトを通じて、谷中地域の潜在的な課題やニーズを知ると同時に、高齢者や地域住民との関わりが意外にも希薄であることを実感しました。普段は気づけない視点に触れる中で、防災と高齢者の取り組みが地域にとって重要かつ大切な課題であることを学び、「防災とアート」という新しい視点でコミュニケーションの機会を生み出す可能性を感じました。また、消火器BOXにアートを施す取り組みやモーニングミュージアムが、地域交流や防災意識の向上につながる可能性を感じています。今後も、これらの取り組みを発展させながら、地域の特性に寄り添った表現を模索できればと思います。

(文責:このゆれチーム)

講師プロフィール

東京藝術大学大学院美術研究科美術教育研究室教授

渡邉五大

1967年 神奈川県生まれ。1992年 東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了後、本学彫刻科助手、文化庁派遣芸術家在外研修員、本学彫刻科非常勤講師等を経て、2011年より神奈川県立高校教員、2019年より現職。傍ら美術家としてインスタレーション、彫刻作品を発表。近年は主に美術家コレクティブ「力五山 (加藤力 渡辺五大 山崎真一)」として活動。
越後妻有アートトリエンナーレ(2009~22)、奥能登国際芸術祭(2017,21)UNMANNED無人駅の芸術祭/大井川(2021〜24)、瀬戸内国際芸術祭(2013)、等に参加。