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2020
6/8

ケア原論1「介護の成り立ちから介護の目的論へ」

講師: 飯田大輔(社会福祉法人福祉楽団 理事長)
「ケア」とは多義的な言葉ですが、今回は「看護や介護」に焦点をあてます。この授業の目指すところはケアのスキル習得ではなく、原理・本質・目的を理解することです。F・ナイチンゲールの思想をベースにした「ケア」について、二週にわたり学んでいきます。

「介護」という概念は日本で生まれたものであって、介護も看護も根は同じ、世界的には「Nursing」と表現されます。近代看護を確立させ、看護師の負担をどう減らすか取り組んできた人物がF・ナイチンゲールです。飯田さんの講義は主に、彼女の著作「看護覚え書」に書かれた言葉に沿って進行されました。

ナイチンゲールの看護論は「病気とは何か」から始まります。「病気とは何か」が分かれば「看護とは何か」が分かるといいます。医学的診断での病気とは「病変を発見し、除去することである」一方、ケアの視点では「全ての病気は回復過程である」としています。自然の回復力が患者に働きかけるのに最も良い状態に置くこと、生命力の消耗を最小にするよう生活を整えることが「Nursing」の役割なのです。

また、介護は生活に密着しているため、ただ何となく世話をしてあげたことがケアになっていると誤解しやすい面があります。良い介護の実現には「ケアのものさし(基準)」が必要です。これを持たなければ、結果が良かったのか悪かったのか評価することもできません。また、飯田さんはケアを語るときに「優しい介護」「あたたかい介護」など形容詞を用いた表現はなるべく使わないようにしていると話しました。こうした判断は誤った実践に導いてしまうことが多いためです。

次に、健康とは何か?障害というものをどう捉えるか?についても考えていきます。ナイチンゲールの健康観は、現代の福祉領域の提言と一致します。「持てる力」に注目したものです。例えば、障害により手がない人がいたとします。従来の考え方では、手がないペンが持てない申請書が書けない社会不利につながる、というように何となくネガティブなイメージがありました。これにかわる新たな基準では、できることを考えるポジティブな見方へと変化しています。手はないが脚や胴体は動くのか、脚を使ってできることは何か、その活動のために必要な環境は?と広げていきます。これらはケアを考える上でも重要なことです。

次回も引き続きこの「ケア」というテーマについて飯田さんにお話しいただきます。

 

講師プロフィール

社会福祉法人福祉楽団 理事長

飯田大輔

1978 年千葉県生まれ。東京農業大学農学部卒業。日本社会事業学校研究科修了。千葉大学看護学部中途退学。
千葉大学大学院人文社会科学研究科博士前期課程修了。(学術修士)
2001 年、社会福祉法人福祉楽団を設立し、特別養護老人ホームの生活相談員、施設長などを経て、現在、
理事長。2012 年、株式会社恋する豚研究所を設立、現在、代表取締役。
現在、千葉大学非常勤講師、京都大学こころの未来研究センター連携研究員、ナイチンゲール看護研究所研究
員。東京藝術大学非常勤講師。
介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士。