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2020
12/7

ダイバーシティ実践論8「バリアフリーってなぁに?」

講師: 朝霧裕(シンガーソングライター・作家)
今回は筋肉の難病ウェルドニッヒ・ホフマン症(脊髄性筋萎縮症)を患っている朝霧裕さんに「バリアフリー」についてお話し頂きました。彼女は車椅子の生活ですが、重度訪問介護の制度を使い、一人暮らしをしています。また、シンガーソングライターとして多数のライブ活動、学校講義を行ったり、エッセイの執筆など多方面で活躍しています。「障害の有無、世代を問わず、だれでも輝ける社会」を夢として、書き、語り、歌っています。

幼い頃は、女性歌手が憧れの象徴でした。それを「自由の象徴」と感じていたのかもしれません。
地元の幼稚園に一年間通っていたとき、障害のない園児たちが車椅子を押してくれるなど、できないことを手伝ってくれました。しかし、30年以上前の当時は車椅子の方に対する偏見も多くありました。小学校は特別支援学校に進学し、心身に多種多様な障害を持つ仲間に出会いました。それから「『人と違う』ことは恥ずかしくない、むしろかっこいいのだ」と思い、特に重度重複障害の子ども達の全身全霊の自己表現は彼女の表現の基盤になりました。ところが、特別支援学校高等部に入ると、進路先がない、という現実の壁にぶつかります。朝霧さんは、親や施設に頼らず生きていくことが可能なのか、インターネットで情報を集めたり駅前や求人誌で介助ヘルパーを募ったりなどして生き方を探すことにしました。
そして、24時間の介護体制での生活が実現します。寝起きする時間やトイレのタイミング、食べたいもの、会いたい人など全て自分で決められることに「これが人間の生活か」と感じたそうです。この時、車椅子を使う人でも生きやすい社会を作りたいと思い、夢であった音楽にも挑戦することを決めました。音楽活動を通して、たくさんの場所、人と出会えますが、中には強く批判してくる人もいます。「いつ、誰が、どんな心や身体、経済的な環境下に生きていても、命を尊びあえる社会」が当たり前になってきていても、生きやすい国になるのは難しいと思ったそうです。

人との違いを優劣で見るのではなく、誰もが生きやすい社会を理想に、その思いで話をし、音楽活動を行っています。まだ自分の活動は小さいと絶望することもあります。健常者が突然今まで通り生活が出来なくなったとき、死しか救いがないと思わせるこの社会には「バリアフリー」が足りません。障害者のためにではなく、自分自身にとっての「バリアフリー」とはどのようなものでしょうか?朝霧さんにとっては一生のテーマで、常に考え、活動をしています。1人では難しい課題なので多くの智恵や力を用いて「人との違い」がどんどん喜びになる社会ができたら良いと思っています。

講師プロフィール

シンガーソングライター・作家

朝霧裕

1979年埼玉県生まれ。愛称は「ダッコ」。
筋肉の難病ウェルドニッヒ・ホフマン症(脊髄性筋萎縮症 SMA1型)のため、車いすの生活。
24時間の介助サポートを得て、さいたま市にひとり暮らし。シンガーソングライターとして、
コンサートやライブ活動、学校講演を行うかたわら、エッセーを執筆。
「障害の有無、世代を問わず、誰もが輝ける社会」を夢として、書き、語り、歌う。

2003年から2018年までさいたま市ふれあい福祉基金チャリティーコンサート
彩の国 ゆめコンサート(彩の国さいたま芸術劇場 小ホール)発起人として
出演・運営を障害の種別や有無、世代を一切不問とする有志とし
時代に先駆けて、バリアフリーコンサートを旗揚げ。第10回まで継続し
後の障害をもつアーティスト達に大きな影響を与える。

現在では、古民家、森、カフェ、学校その他「どこでもうたう」スタイルで
サポートギタリストの奥野裕介氏をはじめ、さまざまなアーティストと
「多様な仲間の出会う場づくり」としてのライブや講演に取り組む。

2020年は、コロナ感染防止のため、youtubeやzoomから
歌やお話を配信中です。

著書「バリアフリーのその先へ!-車いすの3.11」(岩波書店)他多数
彩の国ゆめコンサート最終回記念アルバム「seedー魔法をさずけようー」
ベストアルバム「ドレミファソラシド」他(自主製作)

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