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2024
10/7

ケア原論7「Art & Health」

講師: 室野 愛子(社会医療法人同仁会 耳原総合病院 チーフアートディレクター(所属:JOHNAN株式会社 /NPO法人アーツプロジェクト 理事))
母が交通事故に遭った時、私はICUで眠る傷だらけの彼女になりきろうとした。なぜなら、彼女自身からどこが痛いか、何が不安かを聞けなかった。意識がなかった。

私たちは声をかけた。音は無意識の中にも届くだろう。

音楽をかけた。夢の中の恐怖を追い払いたかった。

手を握った。温もりが届けば安心を感じるだろうかと。

それはかつて彼女が私たち子どもにしていたケアである。言葉がわからなくても、一緒に歌い、歩けなくても一緒に踊り、寂しくなったら抱き合って安心をわかちあった。

メイヤロフ※は「自分以外の人格をケアするには、私はその人とその人の世界を、まるで自分がその人になったかのように理解できなければならない。 その人の目でもって見てとることができなければならない。 相手の世界で相手の気持ちになることができなければならない。」という。
キュアやケアの現場では、痛みや恐怖も共有する。アートは他者を感じとる感性を育み、痛みの中にも喜びや希望を紡ぎだす。本講では耳原総合病院の実践、希望のともしびの物語をお話しする。

※ミルトン・メイヤロフ『ケアの本質』

講師プロフィール

社会医療法人同仁会 耳原総合病院 チーフアートディレクター(所属:JOHNAN株式会社 /NPO法人アーツプロジェクト 理事)

室野 愛子

京都府宇治市 出身

2004年 NPO法人アーツプロジェクト(神戸) 入会
     Art & Health Design Studio 開業
2007年 京都造形芸術大学(京都芸術大学)卒業
2013年 社会医療法人同仁会 耳原総合病院のアートディレクターに着任
2024年 JOHNAN 株式会社へ Art & HealthDesign Studioを継承し入社
    
京都造形芸術大学、情報デザイン学科在学中にNPO法人アーツプロジェクトに入会。
同時に個人事業、Art & Health Design Studioを開業。クリニック、急性期病院、専門病院、介護施設などでアートディレクションの経験を積む。2013年には社会医療法人同仁会 耳原総合病院のアートディレクターに着任し、新築建て替えのホスピタル・アートを統括。
2015年同院の開院後もホスピタル・アートディレクターとして駐在し、日常業務の中でのアートディレクションを担う。次第に、専門職(音楽・イラスト・ダンス)を増やし、チーム増大に伴い2024年、JOHNAN株式会社(京都・宇治)にて同事業を継承し入社。現在は約5名のチームを率いて絵画・造形・ダンス・音楽・ランドスケープデザインなどの芸術制作、文化活動のプロデュース、文化的処方の企画運営を展開している。