現代美術家、ホーメイ歌手。自らの声・身体を媒体に視覚、聴覚、皮膚感覚に訴えかける表現で、音楽/現代美術/舞台芸術の境界を超えて活動。己の身体をテクノロジーによって音や光に拡張するパフォーマンスや、南シベリアの伝統歌唱「ホーメイ」を得意とし、これまでに16カ国で公演を行う。現代美術の分野では、マスメディアと個人をめぐる記憶を扱ったインスタレーション『The Voice-over』や、「パ」という音節の所有権を販売することで成立するパフォーマンス『「パ」日誌メント』などを発表。瀬戸内国際芸術祭への参加をきっかけに2015年より、ハンセン病療養所大島青松園でのフィールドワークに取り組みはじめ、作品を発表。大島青松園の常設展示となっている。現在、秋田公立美術大学大学院複合芸術研究科アーツ&ルーツ専攻准教授。
- 必修科目
- ダイバーシティ実践論
2024
6/3
ダイバーシティ実践論5「ハンセン病療養所から考える芸術」
講師:
山川 冬樹(美術家、ホーメイ歌手、秋田公立美術大学准教授)
ハンセン病はらい菌によって引き起こされる細菌性の感染症です。その歴史は古く、見た目に現れる病であるがゆえに患者さんたちは世界中で差別されてきました。とりわけ日本ではハンセン病の撲滅が近代化の条件とされながら、強制隔離・絶滅政策が進められました。そして戦後に特効薬が開発され、病が治癒するようになっても国は「らい予防法」が廃止される平成8年まで、不当にハンセン病回復者たちを隔離し続けたのです。療養所とは名ばかりの強制収容所の中で生涯にわたって隔離され、尊厳を奪われながらも、そこに生きた人たちは自由の発露と己の尊厳の回復を創作や文化芸術活動に求めました。その仕事は芸術が生存と直接関係のない余剰行為などではなく、人間が人間として生きるために不可欠な活動である、ということを私たちに教えてくれます。東京藝術大学をはじめ美術館や博物館、動物園など、多くの文化芸術施設がひしめきあう上野公園エリアは明治期の文明開化を象徴するエリアです。このエリアが日本近代のポジであるならば、日本に存在する13のハンセン病療養所は日本近代のネガと言えるでしょう。講義ではそのハンセン療養所から、芸術というものの意味について考えてみたいと思います。
講師プロフィール
美術家、ホーメイ歌手、秋田公立美術大学准教授