1981 年神奈川県生まれ。2011 年東京工業大学大学院博士課程修了、博士(工学)。2013-16 年 日本工業大学助教。2015 年より t e c o を共同で設立。現在、東京大学、東京藝術大学など゙にて 非常勤講師。住宅や福祉施設の設計、まちづくり、アートインスタレーションを手がけるなかで、仕組みや制度を横断する空間づくりを試みている。主な作品に住宅「向陽ロッジアハウス」、訪問介 護事業所「地域ケアよしかわ」(2014)、「幼・老・食の堂」など。2021年より、京都工芸繊維大特任准教授。
- 必修科目
- ケア実践場面分析演習
2023
2/8
ケア実践場面分析演習 作品 【知ることは「あそび」からはじまる】
講師:
金野千恵(建築家/teco)
<実習先>
社会福祉法人 チルドレンス・パラダイス
児童養護施設 子山ホーム
<実習先の概要>
千葉県いすみ市にある児童養護施設「子山ホーム」。急坂を上った高台にある子山ホームからは、遠くに海といすみ鉄道を臨むことができます。ここでは4歳〜高校3年生までの計61名の子どもたちが、6〜7人1組で9つのユニットに分かれ生活をしています。
子山ホームではとにかく遊ぶ時間を大切にしており、私たちのチームも2回の施設訪問を通して「遊び」を通じ、子どもたちやスタッフの方と対話を重ねてきました。
<実習の様子・テーマの設定までの道のりなど>
訪問の中で感じたのはジレンマ。
子どもたちは、約7割がその背景に児童虐待という問題を抱えています。中には深刻なケースも。一方で、子どもたちはとてもパワフル。訪問の際は、私たちが遊んでもらっているような感覚でした。
その中で、私たちは必要以上に「児童養護施設」という言葉に、安易に関わってはいけないという重み、そして無意識にフィルターをかけていたことに気づかされます。
子どもたちを取り巻く問題は決して簡単に語れるものではありません。しかし、その実情を伝えることで、無意識の壁はもっと分厚くなり、分断化されてしまう。こうしたジレンマを抱えながら、私たちにできることは何か、たくさんの議論を重ねてきました。
<作品タイトル>
知ることは「あそび」からはじまる
<作品について>
「キックベース大会するんだけど来ない?」
私たちは身近な人たちに声をかけ、子山ホームでキックベース大会を開催しました。子どもたちと大人たちのガチンコ対決。児童養護施設の子というフィルターを取っ払って、子どもたちのありのままを見てもらいたい。私たちの思いとスポーツは相性抜群でした。1日の終わりには、参加者にその日感じたことを写真はがきに書いてもらいました。写真は子どもたちが撮影したものです。
「対象」から「身近な個人」へと変わる。あの日キックベースを一緒にやった○○ちゃんの背景にある、児童養護施設ってどんな場所だろう。どんな人がいるんだろう。
今日をきっかけにフィルターをここに置いていってください。
<全体を通してのチームの感想>
百聞は一見に如かず。実習を始めた頃、児童養護施設を訪ね、子どもたちにカメラを預けて気に入った場所やモノの写真を撮ってもらいました。その写真をみながら、「社会的養護」について私たち自身がもっていたイメージを問い直すことから、実習は始まりました。
自分自身、そしてチームメンバーとの対話の延長線上に、キックベース大会参加者や、成果発表展における外部の方との対話があったのだと思います。
「見たもの」の感じ方や伝え方は、十人十色。「ケア実践の現場を社会にひらく」というひとつの目的に向かって、「私」を起点にDOOR仲間、そして外部/社会へ、集約しつつも広がっていく一本線が少し見えたように感じています。
(文責:子山ホームチーム)
社会福祉法人 チルドレンス・パラダイス
児童養護施設 子山ホーム
<実習先の概要>
千葉県いすみ市にある児童養護施設「子山ホーム」。急坂を上った高台にある子山ホームからは、遠くに海といすみ鉄道を臨むことができます。ここでは4歳〜高校3年生までの計61名の子どもたちが、6〜7人1組で9つのユニットに分かれ生活をしています。
子山ホームではとにかく遊ぶ時間を大切にしており、私たちのチームも2回の施設訪問を通して「遊び」を通じ、子どもたちやスタッフの方と対話を重ねてきました。
<実習の様子・テーマの設定までの道のりなど>
訪問の中で感じたのはジレンマ。
子どもたちは、約7割がその背景に児童虐待という問題を抱えています。中には深刻なケースも。一方で、子どもたちはとてもパワフル。訪問の際は、私たちが遊んでもらっているような感覚でした。
その中で、私たちは必要以上に「児童養護施設」という言葉に、安易に関わってはいけないという重み、そして無意識にフィルターをかけていたことに気づかされます。
子どもたちを取り巻く問題は決して簡単に語れるものではありません。しかし、その実情を伝えることで、無意識の壁はもっと分厚くなり、分断化されてしまう。こうしたジレンマを抱えながら、私たちにできることは何か、たくさんの議論を重ねてきました。
<作品タイトル>
知ることは「あそび」からはじまる
<作品について>
「キックベース大会するんだけど来ない?」
私たちは身近な人たちに声をかけ、子山ホームでキックベース大会を開催しました。子どもたちと大人たちのガチンコ対決。児童養護施設の子というフィルターを取っ払って、子どもたちのありのままを見てもらいたい。私たちの思いとスポーツは相性抜群でした。1日の終わりには、参加者にその日感じたことを写真はがきに書いてもらいました。写真は子どもたちが撮影したものです。
「対象」から「身近な個人」へと変わる。あの日キックベースを一緒にやった○○ちゃんの背景にある、児童養護施設ってどんな場所だろう。どんな人がいるんだろう。
今日をきっかけにフィルターをここに置いていってください。
<全体を通してのチームの感想>
百聞は一見に如かず。実習を始めた頃、児童養護施設を訪ね、子どもたちにカメラを預けて気に入った場所やモノの写真を撮ってもらいました。その写真をみながら、「社会的養護」について私たち自身がもっていたイメージを問い直すことから、実習は始まりました。
自分自身、そしてチームメンバーとの対話の延長線上に、キックベース大会参加者や、成果発表展における外部の方との対話があったのだと思います。
「見たもの」の感じ方や伝え方は、十人十色。「ケア実践の現場を社会にひらく」というひとつの目的に向かって、「私」を起点にDOOR仲間、そして外部/社会へ、集約しつつも広がっていく一本線が少し見えたように感じています。
(文責:子山ホームチーム)
講師プロフィール
建築家/teco