ケア×フィールドワーク実践演習にて行った6つのチームによる企画のレポートを掲載いたします。
また、本授業の各授業回の様子をまとめた「授業レポート」は、本ウェブサイトの以下のリンク先にてご覧いただけます。
URL:https://door.geidai.ac.jp/curriculum-list2021/?y=2025#a3
4、【~手が教えてくれること~手と身体をつなぐ人生と笑顔の時間~と題した、手のひらアートを制作するワークショップの実施】

<チーム名(テーマ)>
ほわほわ(高齢者)
<見つけた地域の課題>
独居の高齢者が地域から孤立しがちであることや、行政や福祉施設などが、認知症支援活動やフレイル予防のイベントを実施しているものの、十分に活用されていない状況などを、フィールドワーク中にお伺いしました。そこから上手く繋がれていない“つながり不足”が課題と感じました。一方で、下町の密なご近所づきあいが、“つながり“を補っていることも知りました。
<企画・制作までの道のり>
当初は、地域のつながりを応援する目的で、施設をまたいだ企画を検討していましたが、具体化することは困難で、行き詰まってしまいました。
最終的には、企画案を考える段階で挙がっていた、“手のひら”というモチーフをベースに、(医社)龍岡会 ごはんと介護の相談所 龍岡栄養けあぴっと(ローソン千駄木不忍通店 内)が実施している、シニア向けイス体操と関連付けて、手のひらアートのワークショップの実施に至りました。
プログラムは、ゆっくりと手にまつわる思い出を振り返る内容から、職員の方へのヒアリングや、イス体操への参加を経て、楽しく彩色するひと時を通じて、自身の手(身体)への肯定感や健康維持へのモチベーションアップを目的とする内容に練り上がっていきました。

<企画名>
~手が教えてくれること~手と身体をつなぐ人生と笑顔の時間~と題した、手のひらアートを制作するワークショップの実施
<企画概要>
◎目的
・自分の手を通して自己を振り返り、自分の身体への感謝やねぎらうひとときを持つこと
・健康維持・促進への意欲向上(イス体操への参加モチベーションアップ)
フィールドワークの段階からお世話になっていた、龍岡栄養けあぴっと様のご協力いただき、コンビニエンスストア のイートインスペースで、ワークショップを実施しました。こちらでは、シニアのフレイル予防のため、ほぼ毎日イス体操を実施されています。その参加者を主な対象として、体操後の30分間で、ご自身の手のひらをトレースした後、彩色、最後に手に一言メッセージを添えるという内容で行いました。彩色には、水彩絵の具、ポスターカラー、マスキングテープ、色鉛筆などを用意しました。お好きな色の台紙に挟んでお持ち帰りいただきました。 ご参加くださった方々は、画材に久しぶりに触れる方が多く、新鮮なご様子でした。色々お話をしながら、また職員の方々にもサポートしていただき、和やかなひと時となりました。お帰りの際に、亡くなった旦那様が、絵が好きだったことを思い出したのよ、とお話された方もいらしたそうで、ご自身を振り返る小さな温かい時間になったのであれば幸いです。
<全体を通してのチームの感想>
「つながり不足」という規模の大きい課題を、実現可能な内容にチームで落とし込むことがとても難しかったです。最終的には、「地域のつながりを生み出す新たな企画」ではなく、既存の活動に関連付けた内容を考えて、場と利用者のつながりを応援する意味合いが強いプログラムに落ち着きました。
実際に企画を詰めていく段階では、会場や利用者の特性とのすり合わせのために、構成は何度も練り直しが必要になりました。タイトなスケジュールの中、なんとか企画実現できたのは、一重に、龍岡栄養けあぴっとの皆様の温かいまなざしとご協力のおかげです。本当にありがとうございました。
また、一連の活動全てが初めての貴重な経験で、学びの多い時間を過ごすことができました。
(文責:ほわほわチーム)
5、【日用品(手ぬぐい)をアートで彩ろう】

<チーム名(テーマ)>
WhiT-s(貧困)
<見つけた地域の課題>
課題は「つながりの希薄化」と考えました。私たちがフィールドワークを行った台東区山谷地区は、かつて日雇い労働者のための「ドヤ街(簡易宿泊所街)」として知られていました。現在では当時の面影は薄れていますが、この地域で暮らす方々はお互いに適度な距離感を維持しながらも必要なときにはつながることのできる関係性を求めているように感じられました。
<企画・制作までの道のり>
台東区福祉協議会にご相談をして貧困がテーマであれば山谷地区を検討してみてはどうかというアドバイスを受けリサーチを進めました。そのなかで山谷地域で生活/医療相談会やフードバンク支援をしている一般社団法人「あじいる」に出会い、山谷での毎月の活動にボランティアとしてチームで参加したことで、あじいるのアート活動を知りました。強いることなく自由に大きなキャンパスに「なかま」がクレヨンや水彩絵の具で共同制作していくものでした。山谷を深く知り、支援する側・支援される側とわけることなく「なかま」として一緒に活動するあじいると協働しながらであれば、と私たちが企画検討していたアートワークショップの実現の可能性が生まれました。

<企画名>
日用品(手ぬぐい)をアートで彩ろう
<企画概要>
あじいると連携し、「あじいる」と「WhiT-s」のロゴ入りの手ぬぐいにカラーペンで一人ひとりの思いや感覚を自由に描いてもらいました。支援する側・支援される側という立場をこえて、「なかま」みんなが参加できるアートの時間になりました。 手ぬぐいはつくったら終わりの消耗品ではなく、つくったあと暮らしの中で繰り返し使える日用品です。つくること自体が楽しみとなり、完成後も自然と手に取ることができます。使うたびに、その場で過ごした時間や出会いを思い出し、ゆるやかなつながりを感じてもらえたら、という思いを込めました。制作の時間には、絵を描きながら自然と会話が生まれ、日ごろ感じていることを言葉にしたり、互いの存在を知るきっかけが生まれました。アートをコミュニケーションのツールとして用いることで、「なかま」づくりへの一助になる可能性を感じました。
<全体を通してのチームの感想>
貧困をテーマに選んで最初の躓きはその多様さでした。ひとくちに貧困といっても切り口や当事者の方の属性も様々で深刻さにもグラデーションがあり、具体的な対象設定には沢山の議論と時間を要しました。いま、活動を通して当事者の方の言葉を聞き顔が見えるようになって、より一層「貧困」の多様さと難しさを感じています。貧困の種類や捉え方は個々人によって全く異なり、同じ支援をして機会を設けても、その成果や「貧困の出口」は一つではありませんでした。それでも向き合い続けることで、その人なりの「生活」が続いたり、あるとき気持ちが動いたり、その時に支援できる状態‧関係性を保つことが重要なのかもしれないと思っています。少しずつでもつながりを持ち続け孤立させないために何ができるか、他チームからも刺激を受けながら取り組み、アートの可能性を実感した授業でした。
(文責:WhiT-sチーム)
6、【テーマ:地域の日常に若者を可視化する /成果物: ①重ねる、地図 ②サウンドマップ(A0サイズ) ③若者お気に入りマップWeb版】

<チーム名(テーマ)>
ゆめまちFu⤴︎(若者)
<見つけた地域の課題>
若者と地域(谷根千エリア)は、お祭などの「ハレ」の日に接点を持つ。しかし日常の「ケ」の日に戻るとその交流は途絶えてしまう。地域に若者は存在するが、地域のコミュニティや住民の視界・語りの中に彼らが「映り込んでいない」。若者の物理的な不在ではなく、地域での彼らの認識上の不在こそが課題であると考えた。このズレを埋め、若者と地域の見えない断絶をつなぐ取り組みを模索した。
<企画・制作までの道のり>
地域の町会や青少年育成会の方々への聞き取りを通じ、若者と地域の接点が祭りなどの「点」に留まっている現状を知った。若者の感性を地域の日常に可視化することによって、地域と若者の「橋渡し」を目指した。
若者へインタビューを行い、お気に入りの場所や聴き取った音、オノマトペを収集し地図に反映した。その地図を片手に地域住民とともにサウンドウォーク(参加者6名と事務局2名で散策をしながらまちの音に耳を傾けるイベント)を実施した。若者の感覚地図を参照しながら街の音に耳を澄ます体験は見慣れた日常を新鮮なものへと変え、街に出会い直す時間だった。異なる視点や聴覚から得られた情報を多層的に一枚の地図に重ねるプロセスから発見したことをもとに、三つの制作物をつくった。

<企画名>
テーマ:地域の日常に若者を可視化する /成果物: ①重ねる、地図 ②サウンドマップ(A0サイズ) ③若者お気に入りマップWeb版
<企画概要>
1.重ねる、地図(地図、写真、オノマトペを重ねた冊子)
素材:紙、OHPシート、スライドバーファイル
サイズ:A4
構成:表表紙、P1〜P9、裏表紙/スライドバーファイル綴じ
概要:地図とOHPシート(透明なプラスチック・フィルムシート) を重ねた冊子をめくりながら、若者のお気に入りの場所・感覚を反映した地図に、自身の感覚を重ねる体験ツールを作成。素材は取材した若者が提供、「地域のお気に入りの場所」の写真はチームメンバーが撮影。
構成詳細:
表紙:「こんにちは、ここにいます。」(イラスト:地域在住特別支援学校高等部3年富岡泰俊さん)
P1:(OHPシート)若者「地域のお気に入りの場所」の地図
P2:(OHPシート)同上の写真
P3:(OHPシート)同上のオノマトペ
P4:(白紙/説明文)「これは、このまちに縁のある若者たちが感じているこのまちの地図です。」
P5:(OHPシート)若者の「お気に入りの写真」のハッシュタグ#
P6:(OHPシート)若者の「お気に入りの写真」
P7:(白紙/説明文)「これは、このまちに縁のある若者たちの今、心に映る風景です。」
P8:若者たちの「お気に入りの写真」のコラージュと「若者お気に入りマップWeb版」QRコード
P9:インタビュー協力者一覧
裏表紙:「あなたはどこにいますか?」(イラスト:富岡泰俊さん)
もう一つの使い方: 裏表紙「あなたはどこにいますか?」からはじめて、表表紙「こんにちは、ここにいます。」で終わる。前後のどちらからもめくりはじめることができる。
2.サウンドマップ
素材:ダイレクトパネル(片面カラー/7㎜)
サイズ:A0
概要: サウンドウォークのワークショップを実施し、参加者それぞれが感じたこと、聞いた音、オノマトペを付箋に書いてA0サイズの地図パネルに反映した。サウンドウォーク後に、参加者が口頭でグループに共有し、共同作業として地図への反映を行った。作成後の地図パネルは、ワークショップを開催した「まちの学び舎ねづくりや」に16日間設置し、来店者が地域のオノマトペを記載できるようにした。今後は調剤薬局など待ち時間に見て参加できる場所にサウンドマップ・パネルを設置し、地域の中で出会っていない人が、見えないけれど確かにいる人の存在に気づく手段のひとつとして提供予定。 活用ツール: サウンドウォークには「重ねる、地図」を使用し、以下のページを追加。
P1:(OHPシート)「あなたの音は…? 」 ※自分のお気に入りの場所やオノマトペを追加していくことができる。
P2:若者の「地域のお気に入りの場所」縮小版地図(サウンドウォークを実施した地域範囲)
3.若者お気に入りマップWeb版 素材:デジタル
リンク:https://www.google.com/maps/d/u/0/edit?mid=1sFRWkb2Q97FRsJqTHBv4uu3eZYW8-8U&usp=sharing
概要:「重ねる、地図」P1のウェブ版。 若者にインタビューした地域のお気に入りの場所をWEB(Google Map)に反映した。個人のGoogle Mapと同期することで、自分のマップと若者マップの重なりを楽しむことができる。
マップ名:「DOOR9期ゆめまちFu⤴若者推しマップ」
マップのレイヤ名:若者お気に入りマップWeb版 操作方法
1.自身のGoogleアカウントにログイン
2.若者のお気に入りマップWeb版(上記URL)にアクセス
3.別タブで自分のアカウントのGoogleマップを開く
4.Google Map内の保存済み→マイマップ「DOOR9期ゆめまちFu⤴若者推しマップ」選択
5.自身のマップと重なることで、そこに若者がいることを感じられる
<全体を通してのチームの感想>
本プロジェクトは、「地域に若者はいない」という町会等のヒアリング結果を受け、「若者を可視化する」ことを起点に、若者は本当に「いない」のかという問いを掘り下げ、その存在を立ち上げる試みでした。インタビューやサウンドウォークを通して、若者の声や地域の音を拾い、多様な背景や語りに触れる中で、「若者はいないのではなく、地域の日常に映り込んでいないだけだ」という実感に至りました。
特に、若者と町内会関係者が同席した取材では、対話を通して互いの声を「ききあう」関係が立ち上がる瞬間に立ち会うことができました。立場や世代で関与の濃度が異なるからこそ、アートという手法が「無理のない入口」となり、若者が地域に目を向けるきっかけを作れたと感じています。今回の制作物が地域と若者をつなぐ緩やかな橋渡しとなり、若者の不可視性や孤立といった課題にも、新たな可能性をもたらすことを願っています。
(文責:ゆめまちFu⤴︎チーム)

