INTERVIEW

「アートは人生に直結するもの」だと気持ちを伝えられるようになりました

DOOR6期生
竹田麻衣(たけだ まい)さん

DOORを受講したきっかけを教えてください

私は現在、舞台芸術関連の仕事をしているのですが、その関係者の方がSNSに投稿した「DOOR受講生募集」の記事を見たことがきっかけでした。

私が6歳位の時、たまたま住んでいた地域に公立の劇場がオープンしました。そこは“子どものための劇場”として設立されたものでした。おかげで、幼い頃から人形劇や演劇に多く接することができ、劇場というものがとても身近で、私の生活になくてはならない居場所になりました。その影響もあってか、新卒で演劇の制作や小劇場の運営を行う団体に就職し、8年ほど勤めました。離職後は、市民とアーティストが出逢い交流することができる文化芸術施設と、視覚障害者福祉団体に事務員として、それぞれ2年ほどパートタイムで勤務をし、現在再び舞台芸術関係の仕事に就いています。

文化施設と福祉団体での経験。そして出産・子育て、高齢の両親との関わりを通して、30代も半ばを過ぎた頃、地域社会と福祉について自分ごととして考えはじめたのです。社会課題があまりにも多いことにも改めて気づかされました。この先、子どもたちがどんな世の中を生きていくことになるのか、そう考えるとゾッとしてしまう自分がいて、これではいけない、私も何かをしなくては、というぼんやりとした危機感が日々大きくなるばかりでした。仕事の面では、舞台芸術がもつ社会的役割を認識したうえで取り組んでいるものの、それを周知し実践する力が自分に不足していることを痛感する日々でした。

そんなタイミングでDOORと出逢ったのです。これはもう受講するしかないと直感して、すぐに出願の準備をはじめました。

お仕事中の様子

 

実際にDOORを受講してみた感想を教えてください

言葉が少し不適切かもしれませんが、率直に楽しかったです。受講する中で「今日は何を知ることができるのだろう」というワクワク感を毎回感じていました。毎授業後、知らなかったこと、考えが及ばなかったことに対する自分の感情を、受講生のみなさんとの対話や感想文の提出を通して省みる。そういうことを一年間積み重ねることができた本当に尊い時間でした。それぞれ多彩な経験をお持ちの受講生のみなさんの感想は、本当に興味深かったです。毎回、授業の最後に設けられる講師と受講生との対話の時間も、授業内容の理解を深めることに繋がりました。

必修科目の講義は、基本的に毎週月曜日の夜にありましたから、家族もそれに協力してくれました。とてもありがたかったです。月曜は、いつもにも増して品数の少ない夕飯だった気もしますし、子どもたちには少し寂しい思いをさせてしまったかもしれません。それでも、家族から「お勉強頑張ってね」と応援してもらえたことも励みになりました。

「アート×福祉」をテーマにした実践に繋げるための要素がぎっしり詰まった一年間のプログラムでしたが、私はオンライン講義のみ受講しました。北海道在住のため、頻繁に東京へ行くことが難しかったためです。対面授業にも参加したいという気持ちの葛藤は当然ありましたが、心身ともに無理なく修了することを心に決め、充実した一年を過ごすことができたと思っています。

 

印象に残っている授業や実習について教えてください

どの授業も本当に印象深いものだったのですが、「ケア原論」と「アートプロジェクト実践論」が特に印象的でした。

馬場拓也さん(社会福祉法人愛川舜寿会理事長)が講師の回の「ケア原論」の授業は特に忘れられないものでした。馬場さんが語る、福祉施設と地域社会が連動した先進的なまちづくりの様子にとにかく圧倒されました。地域の声をきいて、地域を知る。地域の人々との関わりは“見えなきゃはじまらない”。子どもと一緒に街をあたためていくことなど、今後の自分の活動にも通じる重要なことを実感できました。「eアーカイブラーニング」の授業動画で、福祉施設を拠点として地域社会へ積極的なはたらきかけを行っている北海道の福祉法人の取り組みを知ることができたことも思い出されます。

私は対面授業には出席していませんでしたので、その分「eアーカイブラーニング」にもう少し多くの時間を使えばよかったと今更ながら反省しています。

もうひとつ心に残っている授業は、奥山理子さん(みずのき美術館キュレーター、HAPS「Social Work / Art Conference」ディレクター)が講師の「アートプロジェクト実践論」です。この授業では、アートプロジェクトの成り立ちから実践のノウハウまで、丁寧に伝授してくださったという印象があります。アートが、生活することやよく生きることに作用し、確かにケアに通じるものだと改めて感じました。

この授業は夏休み期間に実施されたので、自宅にクーラーがない中で夏の暑さと戦いながら受講したことも思い出深いです。受講者は全国各地からオンラインで参加されていましたので、皆それぞれ暑いんだろうな、札幌より絶対暑いよなぁ…と、画面越しに想いを馳せていたこともいい思い出です。(笑)

 

ーオンラインでの受講はいかがでしたか?

「全国からオンラインで受講可能!」と募集案内に大きく書いてあったおかげで、受講することを決心できました。これは、本当にありがたかったです。

DOORのオンライン講義では、一方向的に講義を聞くだけではなく、毎回必ず対話する時間があったり、グループワークやワークショップを行ったり、相互的なやりとりも多かったです。受講生は皆、知ることや学ぶことに貪欲な方々なので、積極的に考えを伝え合い、気持ちをキャッチボールすることができたことがとても心地よかったです。そのお陰で、オンラインのみの受講であるにも関わらず、皆さんと一緒に講義を受けている感触を持ち続けることができました。地方在住の身としては、皆が画面越しに同じ距離感で対話できたこともなんだか嬉しかったです。

修了式の翌日に受講生が企画した「6期生の集う会」で、はじめて東京藝大構内に足を踏み入れ、DOORの助手の皆さんや受講生の皆さんに直接会えた時は、感極まりました。一年間パソコンの前で頑張ってよかった!と思いました。企画してくれた皆様、DOORの皆様に感謝です。



ご自宅でのオンライン受講の様子

 

−受講してみてご自身の心境の変化などがあれば教えてください

その人がなぜそのような行動をとったのか、なぜそう考えるのか、そう考えるに至ったのはどんな事情があったのか、どんな風に生きてきたのか。すべてのことは繋がっていて、社会と関係ない人やことはひとつもないのだと思い知らされました。

アートは人が生きることに直結するものだ、と自分の気持ちを伝えられるようになったことが、DOORを受講してからの一番大きな変化ではないかと思っています。





「6期生の集う会」の様子

 

 

 

2023年11月