第50回定例会 記念トークLIVE!日比野克彦、語る。⇄「つなぐ人 日比野克彦」

開催日: 2024年10月5日(土) 

NEXT DOORの第50回定例会は、「記念トークLIVE!」として東京藝術大学の日比野克彦学長をお招きし、多様で広範なフィールドでの活動と関心ごとを共有いただきました。

藝大と香川大学・香川県が連携して取り組む「瀬戸内海分校プロジェクト」『海は人を愛する​「ひと⇄うみ」展』初日のため、日比野先生は「芸術未来研究場せとうち」からアクセス。

1期から8期まで全国のDOOR修了生・現役生に加え、アート・コミュニケータ(とびラー、トリばァ)を含む151名がオンラインで会し、交流する、NEXT DOORの記念回にふさわしい「つながり」を感じられる時間となりました。

はじめに語られたのは、元日に発生した能登半島地震のことでした。復興支援のため現地入りした9月に集中豪雨に見舞われ、目的地の珠洲市にたどり着けなかった時のむなしさ、やるせなさが、温もりのある声に乗せて届けられました。そのときの経験から、能登と香川をオンラインでつないでパッチワークを共同制作した「ハートマークビューイング」プロジェクトのエピソードが披露されました。

手元の刺繡で視線は合わせられなくてもつながりを感じられる一体感から、珠洲の日本海と香川の瀬戸内海を前に「お互いに海が見えるね、何か一緒にできるといいね」と、今後のコラボレーションを約束したそうです。

前日は熊本市現代美術館で、分身ロボット「OriHime」開発者の吉藤オリイさんとトークセッションを開催。「つながる」とは単に画像や声がつながるだけではなく、いかにその人の「存在」や「気配」を感じられるかだという話題を共有されました。
ルドンが描いた南仏の修道院図書館の壁画世界を、メタバース空間を介し、日本の会場の来場者へと新たにつなぐ、VRゴーグルを装着したライブペインティング「脳はダマせても ⇄ 身体はダマせない」では、脳の認識と身体感覚のねじれを検証し、つながることの意味を見つめ直すという関心深いお話も。

また、審査員を務められた岡山の「なんでそんなんプロジェクト」では、他者からの「なんでそんなん?」との問いに、本人はあたりまえに思う「価値観のズレ」を認め、“つながらない”ことをみんなで称えあうという逆説的な試みを紹介いただきました。

夜の潮風の向こうにたゆたう海を、なんとかみんなに言葉や映像で伝えようとする日比野先生。「ひと⇄うみ」展の作品の実況中継はライブならではの盛り上がりに。参加者との質疑応答も交えながら、現実世界の距離を物ともせず、また現実空間と仮想空間もアクティブに往来する先生とのつかの間の交流を楽しむことができました。

引き続き、藝大社会連携センター教授の伊藤達矢先生のビデオによる応援メッセージや、2期~7期のDOORを支えていただいた田中一平先生と今年度8期からDOORを担当されている藤原旅人先生によるDOORへのエール交歓があり、来たるDOOR10周年に向けた「新たなつながり」や「つながり直し」への期待が高まりました。

8月に実施したNEXT DOOR100人アンケートの集計結果によると、これまでの定例会の参加人数はのべ1,500人超、アフターコロナでのリアル開催やテーマを設けたゆるやかな交流などの要望も多く、さらなる次代のNEXT DOORへの夢もふくらむスペシャルな夜となりました。(世話人安東、川原)