第44回定例会 『障がい者の芸術文化活動〜パラリンピック開閉会式の舞台裏とレガシー〜』


開催日:2024年3月30日(土)
第44回定例会は、コンテンポラリーやダイバーシティー分野の舞台芸術、展覧会、フェスティバルなどの制作に携わり、国内外の芸術祭等で活動されている6期生神田さんをお迎えしました。
TOKYO2020に向けて、2016年からTOKYO文化プログラムがキックオフされて以降、様々な文化プログラムの中で障がい者の芸術文化活動も注目され、多くのイベントやフェスティバルが開催されました。それらを経て育ってきた多くの障がいのあるアーティストやパフォーマーがパラリンピック開閉式に出演、活躍しました。芸術文化と福祉がどう関わり合い、変化してきたのか。障がい者の芸術文化活動について、神田さんが関わったプロジェクトを事例として、興味深いお話が展開されました。
TOKYO2020オリンピック、パラリンピックは、新型コロナ感染拡大による延期決定。その後の演出チーム解散、再編など、開会までの道のりは平たんではありませんでした。その中で神田さんはTOKYO2020に関わる活動をどうしてもやりたいという強い意志をもったN P O法人スローレーベル・代表の栗栖良依さんや仲間たちと共に、多くのプロジェクト(「True Colors Festival」〜超ダイバーシティ芸術祭〜」「ヨコハマ・パラトリエンナーレ」「スローサーカスプロジェクト」など)に携わりました。これらの活動を続ける中で、アクセシビリティの課題(参加したくても一人で行けない物理的バリアー、自分にはできないのではないかと委縮してしまう精神的バリアー、情報が届かなかったり理解できなかったりする情報バリアーなど)に直面し、障がい者パフォーマーをサポートするスペシャリストの育成の必要性を強く感じ、“アカンパニスト”“アクセスコーディネーター”というスキルを持つ人材育成にも取り組んだそうです。
TOKYO2020パラリンピック開閉会式では、のべ5000人以上の中からオーディションで選ばれた障害のある多様なキャストが、それぞれに個性を最大限発揮し、体の個性をより引き立たせる衣装に身を包み、圧巻のパフォーマンスを繰り広げました。スローレーベルは、彼らと一緒にクリエーションを行い、アクセシビリティ面のサポートをしたほか、無観客ではありましたが、障がいのある選手のためのコメンタリーガイド(音声ガイド/字幕)の作成・放送を行いました。
参考:メイキング映像(パラリンピック開会式)
メイキング映像(パラリンピック閉会式)
現在神田さんは、プリコグという舞台芸術とアクセスビリティ・インクルージョンに力を入れた会社で、厚生労働省の障害者芸術文化活動普及支援事業やアクセシビリティに特化したオンライン劇場『THEATRE for ALL』に関わられているほか、2025年はプリコグ代表・中村茜さんがキュレーターを務める「国際芸術祭あいち2025」のパフォーミングアーツプログラムのコーディネーターとして、身体障がい者にしか演じられない身体表現を追究する劇団の招聘などを行うそうです。(1年間名古屋にいるので遊びに来てください!とのこと)。
最後は、TOKYO2020のレガシーは何だったのか、みんなで考える時間でした。TOKYO2020を経て、芸術文化活動を行う福祉施設が増え、また芸術分野では、アーティストや制作者の活動領域が障害者のみならず高齢者やジェンダー、ホームレスなどに拡がってきたり、情報保障(手話、音声ガイド等)付きの舞台や映画が増えたりしています。
TOKYO2020のレガシーをどう継承していくか、みなさんも考えてみませんか?(6期神田、世話人原田)